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蓑亀(みのがめ)──井の頭 2006/12/22
◎文化園四季折々「蓑亀」

 とっても珍しいカメ「蓑亀」(みのがめ)が、井の頭自然文化園にお目見えしました。正門を入ってすぐ右側、竹垣の前です。「蓑亀」をごぞんじない方も、どんなカメなのか、漢字から何となくイメージできるのではないでしょうか。そう、蓑を着けたようなカメ。浦島太郎が乗っていたあのカメです!

 ミノガメという種があるわけではありません。百科事典によると「爬虫綱カメ目ヌマガメ科に属するイシガメの老熟個体の内、背甲に藻が付着したものを『蓑亀』という」そうです。ただし、文化園で展示している個体は、甲長約10センチのかわいらしいクサガメです。

 吉兆のあかしとされる「蓑亀」は、宮中に献上されると元号が変わるほど、古くから珍重されてきました。「霊亀」「宝亀」などの元号がその例です。中国では「緑藻亀」「緑毛亀」と呼ばれ、霊亀、神亀、福亀としてあがめられ、龍、鳳凰、麒麟とならんで「四大幻獣神」とされています。

 「鶴は千年、亀は万年」といわれるように、蓑亀は千歳飴の袋、根付や絵皿など、さまざまな意匠に使われている、長寿の吉祥文様です。実際のところ、タンチョウの寿命は約30年、最高記録は42歳。クサガメの寿命は平均20~30年。最高記録は70年。ガラパゴスゾウガメになると、オーストラリア動物園で飼育されていたもので 175歳まで生きた記録があります。博物学者の南方熊楠が飼っていたクサガメの「お花」は、2001年に老衰で死亡するまで100年近く生きたといわれています。また熊楠は、自宅の庭で飼っているカメを蓑亀にする実験を試み、成功したようです。

 現在、分園の水生物館では特別展「今と昔の井の頭池のいきもの」を開催中ですが、なんと、展示している「カミツキガメ」にも、ヒョロヒョロと仙人のヒゲのような、ひとすじの緑藻が生えてきています! 飼育係の話では、「今までバックヤードで飼育していたが、特別展のため表に展示するようになったら急速に伸びてきた」とのこと。外来生物のカミツキガメも「福亀」の名にあやかろうというのでしょうか。

 今年もあと残りわずかとなりました。皆さんもおめでたい「福亀」をごらんになり、新年に福を呼びこんでください。

〔井の頭自然文化園教育普及係 高松美香子〕

(2006年12月22日)



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