◎文化園四季折々
近年、この時期になると新聞等でコイヘルペスという文字をよく見かけるようになりました。昨年(2005年)は、上野の不忍池でも発生しました。
「コイヘルペス」とはウイルスの名前で、その名のとおり、コイに感染します。ただし、ヒゴイやマゴイなどのようなコイにだけ感染し、その他の魚や生き物には感染しません。当然、人には感染しない病気です。ご安心ください。
この病気にかかったコイはウイルスが脳や心臓、腎臓などに住みつくといわれ、とくにエラに病変が見られるのが特徴です。エラにウイルスが悪さをして「エラグサレ」という状態になり、コイは呼吸ができなくなって水面を元気なく泳ぎまわり、流れの豊富なところに集まります。これがしだいに弱っていき、最後に死亡してしまいます。
新聞でも報道されましたが、コイヘルペスが今年は井の頭恩賜公園の池で発生してしまいました。原因は、この病気にかかったコイをだれかが放流してしまったことによるものといわれています。
2006年6月に入って水温が上がり始めたころからバタバタとコイが死に始め、現在、池全体で毎日数十匹が死亡しています。池には異臭がほのかにただよい、池の一部の水面に白い膜が浮かんでいます。
動物園の職員も、井の頭恩賜公園の職員とともに対処にあたっています。死亡後岸辺にたどりついたコイを引き上げ、土中深くに埋めていますが、現在、作業が追いつかないほどです。ウイルスは、水温が20度以下、あるいは、30度以上にならないとおとなしくならないそうで、作業はしばらく続きそうです。また、全滅することはないといわれていますが、池のコイはどうなってしまうのでしょうか? 池に与える影響も心配です。
このような状況ですから現在、井の頭の池のコイは法律により移動が禁止されています。また、どこかの池でコイを放すことも絶対にしないでほしいものです。
なお、井の頭自然文化園の水生物館で飼育しているコイはだいじょうぶです。当然ながら、発生区域のコイは入れていません。また、しっかり観察をつづけています。ご安心ください。
写真上:ボートからコイ死体を回収する職員
写真下:死んで浮かぶヒゴイ
〔井の頭自然文化園水生物館飼育展示係 山口歩〕
(2006年6月23日)
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