2024年9月29日にジャイアントパンダの「リーリー」(オス)と「シンシン」(メス)が中国へ返還されたあと、上野動物園には「シャオシャオ」(オス)と「レイレイ」(メス)が残り、「パンダのもり」ではこの2頭を飼育、展示しています。
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西園「パンダのもり」(詳細は「PANDA.JP」をご覧ください)
レイレイはレッサーパンダ側の放飼場Bと1号室を使い、シャオシャオは夕方には2号室に入れますが、日中は子ども動物園側の3号室と放飼場Dを使っています。
「なぜ、広くて見やすい放飼場Cを使わないの?」と疑問に思う方も多いのではないでしょうか。じつは私たち飼育係も、シャオシャオを起伏のある放飼場Cに出し、より広い場所ですごしてもらいたいと考え、そのつもりで準備をしてきました。そこで10月のある休園日にこの放飼場Cへシャオシャオを出してみました。
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放飼場Cに出た時のシャオシャオ
この放飼場の奥には、高木を含む植栽帯があり、それらを保護するために手前には「電柵」(脱出防止のため電流を通してある柵)が設置され、放飼場を分断しています。そのため、パンダは植栽帯には入り込むことができないようになっています。
2号室から放飼場Cへ出たシャオシャオは、慎重な足どりで、いたるところのニオイを入念に嗅ぎながら中を探索していました。観覧通路とのあいだにある「モート」(空堀)から落ちそうなそぶりもなく、安心したのも束の間、放飼場内の電柵にふれたかと思うと、驚いたのか電柵の下をくぐりさらに奥へ進んでしまいました。これまで利用してきた放飼場は、電柵が壁側に配置されていたので、途中に電柵があるとは思わなかったのかもしれません。
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放飼場内に横断して張られている電柵と奥の植栽帯
入り込んでしまった植栽帯のさらに奥には、一段下がった通路があり、そこへ下りれば、2号室の裏側にある寝室に戻れる扉があるのですが、初めての場所でシャオシャオは気づかなかったようです。飼育係が屋上から声をかけたり、えさを使ったりしてシャオシャオをその扉へ誘導しようと試みましたが、なかなか思いどおりには動いてくれませんでした。結局、1時間ほど経ってから、ようやく通り抜けた電柵の同じ場所から戻り(このときは電柵の電気は切っておきました)、無事に2号室へ入れることができました。
放飼場Cは日当たりがとてもよく、日影が少ない場所ですが、植栽帯の中にいるシャオシャオの姿から、高木などの植栽帯が作り出す木陰は、ジャイアントパンダにとってすごしやすい環境になるのではと感じました。
こうした植栽帯の利用については過去にも検討したことがありましたが、当時は移植した植物が十分に根付くまでは保護が必要で、実現できませんでした。現在の植栽帯は移植してから4年以上経過しており、十分に根付いています。そのため、今回改めてこの計画を実現させるための準備を進めることにしました。
引き続きシャオシャオがすごしやすい環境を整えるため、飼育管理に努めます。今しばらく、放飼場Cでのシャオシャオの公開はお待ちください。
〔上野動物園西園飼育展示係〕
(2024年12月09日)