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オジロワシ19年ぶりの繁殖、そして5世の誕生
 └─多摩 2022/05/27
 今年4月8日と11日に、オジロワシのひなが2羽誕生しました。2003年以来19年ぶりの繁殖になります。


オジロワシ両親とひな1日齢と4日齢
(撮影日:2022年4月12日)

 多摩動物公園では、1976年に国内で初めてオジロワシの繁殖に成功し、それ以降「トカチ」×「ダイセツ」の初代ペア、「青」×「クロダケ」の2代目ペアが累代繁殖を続け、多くの繁殖個体がほかの動物園に旅立っています。しかし1997年からはもっとも絶滅に瀕するニホンイヌワシの繁殖を優先させることになり、オジロワシは2003年が最後の繁殖になっていました。

 今回繁殖したのは、2013年に姫路市立動物園で生まれた「明神」(オス)と、飛翔できない野生保護個体(2002年保護)の「北見」(メス)です。実はこの明神の母親は、多摩の2代目ペア青×クロダケ(初代の子供、1982年生)から生まれた「テンジン」(1987年生)で、多摩の初代ペアの孫にあたります。ですから明神はひ孫の4世、今回生まれたひなたちは5世ということになります。

 2代目ペアは当時フライングケージの擬木の巣台で繁殖していましたが、今回繁殖したのはその手前の小さめの繁殖ケージです。2016年から同居を始めましたが、これまでは産卵はするものの、無精卵が多く、繁殖には至りませんでした。今年は1月ごろから営巣行動と交尾があり、2月5日と8日に2個産卵しましたが、メスは抱卵するものの、オスは交代せず、卵は1週間ほどで割れてなくなってしまいました。2月下旬には再び交尾が始まり、3月4日に産卵しました。その後2卵目も産卵し、こんどはオスも交代して抱卵しました。そして抱卵35日後の4月8日朝に1羽目が、4月11日には2羽目も無事孵化し、ひなが誕生しました。

 ところがこのペアは初めての子育てのため、メスはなかなかうまくひなに給餌できませんでした。また、えさを巣に運ぶ役割であるはずのオスが、えさを求めて鳴くひなを見て、胸の下に抱いてしまいました。そのため、飛翔できないメスがえさ場まで行き、えさを片足でつかんで枝を伝って巣に運ぼうと試みましたが、途中で落とし、断念してしまいました。仕方なくオスの代わりに飼育係がハシゴを上がり、巣内のメスが威嚇するなか巣台にえさを投げ入れたところ、メスがすぐに給餌をはじめました。数日のあいだ、補助的にえさの一部を巣に投げ入れましたが、やがてオスがえさを巣に運ぶようになり、オスもえさのちぎり方やひなへの渡し方のコツをつかんだのか、給餌もスムーズになってきました。

ひな2羽に給餌するメス
(撮影日:2022年4月17日)
えさを運んできたオス
(撮影日:2022年4月22日)
両親で給餌
(撮影日:2022年4月27日)

 2羽のひなは、大きなひなから小さなひなへの攻撃は見られたものの、順調に育ち、2週齢をすぎるとひなどうしの争いもなくなりました。ひなは現在1ヵ月齢を過ぎ、安定してきたようで、日中はひなだけで寝ていることが多くなりました。いまではメスもくちばしでえさをくわえて巣に運べるようになり、ひなへの給餌が上手になったオスにまかせて止まり木で休むこともあります。ひなは綿羽から黒褐色の幼羽に換わり、さすがに猛禽です、足の発達が早く、指の鉤爪もするどく伸びています。

 ひなの巣立ちまでは70日前後を要しますが、このまま順調に育ち、無事にそのときを迎えられるようにそっと見守っていただければと思います。

ひな2羽に給餌するオス
(撮影日:2022年5月10日)
ひなの爪
(撮影日:2022年5月15日)

〔多摩動物公園野生生物保全センター 小島〕

(2022年05月27日)



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