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コアラ「ニシチ」の健康状態について(※ニシチが死亡しました)
 └─多摩 2021/03/23(04/01更新)
2021年4月1日追記:「ニシチ」が死亡しました。詳しくはこちらのページをご覧ください


 コアラ館で飼育しているコアラ「ニシチ」(オス、2歳)は、2021年3月14日に右下顎の腫れを確認したため同日に検査をしました。検査の結果、リンパ腫(※1)を発症したことがわかりました。コアラは特有の「コアラレトロウイルス」(※2)というウイルスにより、白血病やリンパ腫といった重篤な病気を引き起こすことが知られています。

 国内で飼育しているコアラも、多くがこのウイルスに感染していると考えられています。ウイルスをもっていてもすべてのコアラが発症するわけではありませんが、ニシチがリンパ腫を発症したのは、このコアラレトロウイルスの影響である可能性があります。

 今後はニシチの体調に合わせた治療をおこなっていくことになります。現在は展示室で生活をしていますが、症状が重くなった場合には非展示エリアでの療養をおこないます。

 なお、多摩動物公園は新型コロナウイルス感染症(COVID-19)拡大防止のため、現在臨時休園中です(詳しくはこちらのページをご覧ください)。ニシチの回復を見守っていただければ幸いです。


コアラ「ニシチ」(下顎の腫れがあるようす)
(撮影日:2021年3月14日)

※1:リンパ腫
 血液中には、免疫機能を担っている白血球があります。リンパ腫(悪性リンパ腫)は、この白血球の一種であるリンパ球ががん化した病気です。初期症状として頸部や腋窩(脇の下)、鼠径部(脚の付け根)などのリンパ節に腫瘤(しこり)ができることがあります。

※2:コアラレトロウイルス
 レトロウイルスの一種であり、コアラの免疫不全や悪性リンパ腫の原因のひとつと考えられています。レトロウイルスには、ヒト免疫不全ウイルス(HIV)や猫免疫不全ウイルス(FIV)なども含まれます。
 レトロウイルスはRNAウイルスの一種で、逆転写酵素をもつという特徴があります。逆転写酵素をもつことで、感染した細胞のDNAにウイルス遺伝子が組み込まれるという現象が起こります。生殖細胞系にレトロウイルスが感染している場合には、子孫に伝達される可能性があります。国内で飼育しているコアラの多くがこのコアラレトロウイルスに感染していると考えられています。

2021年3月27日追記
 ニシチの健康状態の経過をお伝えします。

 検査をおこなった3月14日の翌日から、さっそくニシチの治療を始めました。ニシチの負担がなるべく小さくなるよう、初めはニシチの好きなユーカリペーストに薬を混ぜ、経口投与しました。

 3月22日から食べる量が減り、糞の大きさも小さくなって排泄量も減少するとともに、お腹が膨れ、呼吸のしかたにも変化が見られるようになりました。そこで、確実に薬を投与するために、注射に切り替えました。

 その後3月27日現在、ニシチの病状の寛解(※3)は望みにくい状況に至っています。今後は、緩和ケアを進めていきます。

※3:寛解
 症状が一時的に軽くなったり、消えたりした状態のこと。そのまま治る可能性もあるが、場合によっては再発する可能性もある状態。

(2021年03月23日)
(2021年03月27日:その後の経過について追記)
(2021年04月01日:死亡について追記)



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