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ニシゴリラ「ピーコ」の近況[続編]
 └─上野  2020/10/08
 前回2020年2月の記事に続き、ニシゴリラのピーコの近況の続編をお知らせします。

 上野動物園のニシゴリラのメス「ピーコ」は体調がすぐれず、昨年(2019年)の夏から室内で過ごしていましたが、その後は肺炎の症状や足腰を痛めているようすも見られず、現在は穏やかな日々を送っています。

 しかしピーコは国内のニシゴリラとして最高齢の個体であり、気温など、環境の変化への適応は若い頃のようにはいきません。そのため、できるかぎりピーコに負担がかからないようケアをしながら、室内での生活を続けさせています。展示場に出られる日はもう少し先となりそうです。今しばらくお待ちください。

 さて、室内のピーコはどんなようすでしょうか。高齢の動物はどうしても動きが少なくなり、筋力が低下してしまいます。また、ピーコは単独でくらしているため、刺激が少ないことも課題です。

 そこで登場するのがあえてえさを取り出しにくいようにつくったいろいろな「フィーダー」(給餌器)です。中にえさを仕込んだ新しいフィーダーを部屋へ置くと、ピーコは好物のトマトやレタスには目もくれず、一目散にフィーダーへ近寄ります。試行錯誤しながら中身を取り出すと思いきや……中から青草や落花生を取り出すのはお手のもの! 指を器用に使って中からえさをつまみ出したり、重たいフィーダーを頭上へ持ち上げてガラガラと振ってえさを出したり、あっという間に中身をゲットします。飼育係も「今度はもう少し取り出しにくいように工夫をしよう……」とピーコとの“攻防戦”が続きます。


フィーダーに興味を示し、駆け寄るピーコ

指を器用に使ってえさをつまみ出す
重たいフィーダーも軽々と

 また、人間観察が大好きなピーコは、窓の外に人影が見えると素早く窓辺に近づき、じっとこちらを観察します。「なんだ、いつもの人か」と言わんばかりにそそくさと引き返すピーコですが、機敏な動きや軽やかな足取りを見せてくれるたびに、ほっと胸をなでおろします。日中に何度もようすを確認しに行くことは、高齢動物のケアには欠かせない大事な仕事のひとつです。

 朝の挨拶へ行くと、「グッフーム」と大きな声で応えてくれるピーコ。「今日も元気に過ごそうね!」と声をかけ、ピーコとの一日が始まります。

〔上野動物園東園飼育展示係 川原みのり〕

(2020年10月08日)



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