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蓑虫のお話[1]名は知られていても生態はあまり知られていない虫
 └─多摩  2020/02/20

 蓑虫の 音を聞きに来よ 草の庵   松尾芭蕉

ミノムシは秋の季語として多くの俳人に詠まれ、また清少納言の『枕草子』にも登場するなど、古くから身近な虫として親しまれてきました。葉や枝で「蓑」をつくるその独特の形から、子どもにも人気があり、絵本などでもよくとりあげられています。

 知名度は抜群の虫ですが、その生態は今も昔もあまり知られていないようです。上記の俳句や『枕草子』では「ミノムシが鳴く」ことになっているのですが、ミノムシはミノガというガのなかまで鳴くことはありません。

 また、幼虫の姿は知っていたとしても、成虫がどんな姿をしているか見たことがない人が多いのではないでしょうか。ミノムシのオスの成虫は、いわゆる「ガ」の姿をしており、成虫になると蓑から出て飛び立ちます。一方、メスの成虫はイモムシ型の姿をしており、蓑から出ることはありません。

チャミノガのメス成虫
チャミノガのオス成虫

 ミノムシは日本に20種類以上いると言われていますが、有名なのは幼虫の体長が4センチ前後のオオミノガやチャミノガでしょう。オオミノガは1995年前後に外国からの移入種であるオオミノガヤドリバエに寄生され、関東から西日本にかけて激減しました。まわりの職員によると、寄生が話題になってしばらくした2008年ごろ、園内で見かける数が減ったように感じたとのことです。しかし、最近各地で少しずつ数を回復しているのではないかという情報もあり、園内でも他の虫用に切ってきた枝にオオミノガがついていることが増えているので、生息数は以前ほどではないにせよ、回復傾向にあるのかもしれません。

 園内にはオオミノガに似たチャミノガも生息しています。オオミノガとチャミノガを見分けるポイントは、オオミノガはおもに葉を使った紡錘型の蓑を作るのに対し、チャミノガは葉の他に小枝のたくさんついた細長い筒状の蓑を作るところです。また、秋~冬に入って越冬中は、枝に垂れ下がるようについているのがオオミノガで、チャミノガは枝に対して45度くらいの角度で突き出るようについているのがよく観察されます。

左:オオミノガ 右:チャミノガ
色紙で蓑を作ったチャミノガ

 ミノムシを探すのにぴったりの季節は木の葉が落ちた冬の寒い時期です。越冬のため、枝や手すり、建物の壁などに蓑の先をしっかりとくっつけているようすが観察できます。

 多摩動物公園では現在、オオミノガを展示しています。一度蓑をはぎ、色紙で蓑をつくらせた「カラフルミノムシ」もいっしょに展示しています。また、伝統工芸の一つである、ミノムシの蓑で作られた財布も並べました。ぜひご覧ください。

 今展示しているオオミノガは去年(2019年)7月に孵化して成長したものなので、次回、繁殖のようすもお伝えします。

〔多摩動物公園昆虫園飼育展示係 佐々木愛子〕

(2020年02月28日)


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