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続々・新たな視点で見てみると[34]やがて手が出る足が出る:アカハライモリの幼生(後半)
 └─井の頭  2019/08/21

 井の頭自然文化園水生物館では、かつて身近な水辺で普通に見られたアカハライモリを飼育し、展示しています。その展示水槽や裏の繁殖用水槽で観察された、イモリたちの興味深い姿をお伝えするアカハライモリ特集第10回です。

 前回のこのシリーズでは、卵から孵化した幼生がエサを食べ始める(孵化後8日)までをお伝えしました(続々・続々・新たな視点で見てみると[33]生まれたてにはヒゲ?がある:アカハライモリの幼生(前半))。

 孵化後8日で幼生の前肢はだいぶ育っていて、おぼつかないながらも足として機能しています。しかし、この時点で後肢はただの小さな突起といった感じです。


後肢はまだ小さな突起状

 同じ両生類でもカエルは後肢から先に発達し、前肢が後から生えてきます。カエルの前肢が生えるようすは、以前このシリーズでもお伝えしました(続々・新たな視点で見てみると[13]──前肢は突然に:ニホンアカガエルの変態

 後肢の発達に注目しつつ、アカハライモリの孵化後10日のようすから、孵化後58日で上陸し幼生時代を終えるまでを動画で見てみましょう。


【動画】前回と同じ個体を引き続き撮影。孵化後10日から、同58日で上陸するまでのようす


 孵化後10日の幼生は、たてがみのような外鰓が目立ちますが、前肢でしっかりと体を支えているようすがわかります。体の陰になって見づらいのですが、後肢はまだ小さな突起状です。孵化後15日には後肢に指が生えてきましたが、体の脇にぴったりと沿わせたままです。孵化後20日ではだいぶ足らしくなってきましたが、あまり役に立っていなさそうです。

 孵化後30日にはちゃんと足になっていて、前肢と連動してしっかり歩いています。孵化後50日ではムチムチっとした両生類らしい手足になっていて、見慣れたイモリの姿まであと一歩といった感じです。孵化後58日の朝に水から上がり飼育ケースの壁を登っていました。まだ外鰓の痕跡がわずかに残っていますが、幼生時代を無事乗り切りました。全長は4センチに少し足りないくらいで、ひっくり返してみると、おなかはまだ赤くありませんでした。


産卵直後で卵割が始まる前。まだ大きな一つの細胞


69日と12時間35分後。上陸した1匹のイモリ

 今回でアカハライモリの特集は終わりになりますが、面白いものが撮影できたらまたお伝えします。

〔井の頭自然文化園水生物館飼育展示係 三森亮介〕

(2019年08月21日)


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