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ミナミコアリクイの赤ちゃんが生まれました
 └─上野 2019/06/24

 ミナミコアリクイに待望の赤ちゃんが生まれました。母親は「ナツ」(5歳)、父親は「ココ」(推定17歳)です。

 ナツは2016年に高知県立のいち動物公園から上野動物園に来園しました。ココと檻ごしのお見合いを経て、同居させてきましたがなかなか繁殖の機会に恵まれませんでした(ナツの来園と繁殖への試みについてはこちらの記事をご覧ください)。

 来園以降、少しでも繁殖に結びつくよう、取組みを続けてきました。まず、2頭の糞からホルモンを測定し、発情周期を調べました。ナツの発情時期を予測し、発情に合わせて同居させる計画です。

 一方、発情していない時期はナツとココがまったく別々の環境で過ごせるよう、ココの部屋から離れた場所にナツの部屋を用意しました。彼らはにおいにとても敏感なので、日ごろから隣どうしでいるよりも普段は離れた場所にいた方が繁殖のためにいざ同居したときに刺激が高まる、と考えたからです。

 また、ココは国内のミナミコアリクイの中では最高齢です。そこで体調管理のためにえさ内容を見直しました。繊維質が十分とれる配合飼料と野菜中心のえさに変更したところ、夏に体調をくずすことがなくなりました。

 しかし、こうした取組みにもかかわらず、同居させても交尾行動を確認することはできませんでした。ところがホルモン測定の結果、妊娠の可能性が浮上し、2019年3月末に実施したエコー検査で胎児が確認できました。


2019年6月15日撮影

 ミナミコアリクイの妊娠期間は130~160日と言われています。4月中には生まれるだろうと予測して出産準備を進めました。ミナミコアリクイは未熟な状態で生まれたり、母親による授乳がうまくいかなかったりすることも多いので、人工哺育の用意もして待ちましたが、なかなか出産の兆候が見られませんでした。そして、5月13日の朝、ナツの背中に子が乗っているのを見たときは、安堵の気持ちでいっぱいになりました。

 子はオスと判明し、「サン」と名づけました。ココにとって「3」頭目の子どもであり、第1子の「ひなた」と第2子の「あさひ」が太陽にちなんだ名前であること、そして、高知県立のいち動物公園にとって「3」世代目のミナミコアリクイであることが命名の由来です。

 サンはまだナツの背中に乗って移動することが多いのですが、ときどき背中から降りて母親の近くであたりを散策したり、丸太を渡ってナツを追いかけたり、行動範囲が広がってきました。サンの成長を見に、ぜひ上野動物園東園のバードハウス2階へお越しください。

〔上野動物園東園飼育展示係 小川美紀〕

(2019年06月24日)


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