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続々・新たな視点で見てみると[8]──完全変態です:ゲンゴロウの蛹化
 └─井の頭 2017/11/11

 「孵化」「摂餌(1令幼虫)」「脱皮」「摂餌(3令幼虫)」「土への潜行」に引き続き、井の頭自然文化園の水生物館で育てたゲンゴロウの映像をお伝えします。

 幼虫が蛹になるために土の中に潜り込んでから8日と10時間後、それまで蛹室の壁に背中をつけるような体勢で過ごしていた前蛹が突然うつ伏せの状態になりました。それから約2分後、もぞもぞ動いていた前蛹の背中が割れ、中から真っ白な蛹が姿を見せ始めました。


【動画】前蛹は脱皮直前にうつ伏せ状態になる。背中の部分が割れて
真っ白い蛹が出てくるが、あまりに白くてカメラの露出が引っ張られている


 背中の部分が割れてから20分ほどで前蛹の皮をすべて脱ぎ終わりました。脱皮中に蛹はまた仰向けの状態に戻り、おなかの上では後脚がゆっくりと伸びていきました。そして体の両脇には、小さいけれどもすでに翅のもとができています。


蛹化直後の蛹。白く半透明な体が神秘的に見える。でも眼の後ろに生える毛がどことなくユーモラス

 蛹を見ると、幼虫のときの貧弱な脚とちがい、太めのしっかりとした脚がついています。とくに後脚はオールのように漕いで進むための立派な脚になっています。じつは幼虫のときにあった脚や立派な大あごは、蛹になるときに新しく作り直されるのです。実際、片あごになってしまった幼虫や、脚が何本か落ちてしまった幼虫も、蛹になるときに新たなあごや脚が作られて正常な成虫に育ちます。

 ちなみに昆虫が成長していく段階で蛹の状態を経るものを「完全変態」と呼び、ゲンゴロウのほかにカブトムシやハチ、チョウのなかまなどがあります。幼虫と成虫のあいだに蛹の段階がないものは「不完全変態」で、セミやバッタ、カマキリなどが含まれます。水生物園で繁殖させているタガメやタイコウチも不完全変態です。

 次は今回のゲンゴロウシリーズ最終回。羽化のようすをお伝えします。

〔井の頭自然文化園水生物館飼育展示係 三森亮介〕

(2017年11月11日)


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