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マトウダイ、驚きの食事風景
 └─葛西  2016/01/30

 葛西臨海水族園では2016年1月14日から「世界の海」エリア「深海IV」水槽でマトウダイの展示を始めました。


 マトウダイは水深70メートルから 100メートル付近の海底付近で生息しています。大きく伸びた背びれの皮膜、縦方向に平べったい体とその側面にある大きくて白く縁取られた黒い斑点が特徴的な魚です。音や光の変化にかなり敏感な魚で、少しの刺激で落ち着かなくなり、さらに生きているえさ以外をなかなか食べないなどと飼育が難しい魚です。  そんなマトウダイの見どころはなんといってもえさを食べる瞬間です。ふだんはゆったりと水槽内を泳いでいますが、えさを食べるときは別の顔を見せます。

 泳ぎがあまり速くないマトウダイは、エサの小魚に気づかれないようにゆっくりと近づいていきます。捕食できる距離まで近づいたとき、その衝撃的な光景が見られます。ふだんはなんの変哲もないように見える口がガバッと筒状に突き出すように大きく開き、一瞬で海水ごと小魚を丸飲みにしてしまいます。


 じつはマトウダイの口は折畳まれていて、大きく前へ伸ばすことができるようになっているのです。一瞬で捕食する早わざと大きく突き出る口に驚きの一言に尽き、いつもの遊泳姿からは想像もできません。

 このように口を伸ばした状態が馬の頭のように見えることから「馬頭鯛」(マトウダイ)と名付けられました。また、名前の由来には諸説あり、体の黒い斑点が「弓場の的」のように見えることから「的鯛」(マトダイ)→「マトウダイ」と変化したとも言われています。

 前述したように、マトウダイはなかなか生きているもの以外を食べようとしません。しかし、この驚きの摂餌行動をみなさんにもご覧いただくため、鮮魚のマアジやカタクチイワシでも食べるよう、餌づけのための努力を続けます。また、立派なマトウダイが多数泳いでいるようすは見応えがあります。ご来園の際は少し足を止めて、じっくり観察していただければと思います。

〔葛西臨海水族園飼育展示係 加茂耕太朗〕

(2016年01月30日)


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