多摩動物公園トナカイ舎の近くにあるコウノトリの「子育てエリア」。ここではその名のとおり、現在コウノトリが巣台の上で子育てをおこなっていますが、その足元ではガンたちが恋の季節を迎えています。
「子育てエリア」では現在、コウノトリの巣台がある大ケージとその下方にある小ケージで4種15羽のガン類を飼育しています。今回はここで飼育しているミカドガンの恋模様をご紹介します。
2013年秋ごろ、大ケージではインドガン4羽(2羽はペア、もう2羽はペアを解消してしまった雌雄)、ハクガン1ペア、コクガン1ペアがくらしていました。そこへ今まで小ケージで飼育していたミカドガン1ペアとペア相手のいないオス2羽(以下、単独オス)を、運動をかねて移しました。
すると、ミカドガンのペアは大ケージでも今までどおり2羽で連れ添っていましたが、ミカドガン単独オスの1羽はインドガンペアのメスに、そしてもう1羽は、ペアを解消したインドガンのメスにくっついて歩くようになりました。あまりにも展開が早く驚きましたが、「ガンの恋は一目ぼれ」という先輩の言葉を聞き納得しました。
しかし、単独オスが自ら見つけた念願の相手は他種、しかも1羽はすでにペア相手がいる個体です。その後、このオス2羽の恋の行方はどうなったのでしょうか。
インドガンペアのメスに恋をしたミカドガンは、ペア相手のオスに追い払われることもなく、しばらくは3羽で連れ添って行動していました。ペアのどちらも気にしていないようで、ミカドガンのオスだけが必死についてまわっているようでした。しかし、春になり繁殖期が近づくと、インドガンのオスも「やる気」が出てきたのか、ミカドガンを追い払いメスを守るようになりました。追い払われる単独オスはやや気の毒でしたが、インドガンペアの絆が無事で担当者としては安心しました。
一方、ペアを解消したインドガンのメスに恋をしたミカドガンは、相手にはされないものの、ずっとメスの後をついて回っていました。その後、他の場所で飼育していたインドガンのオスと一緒にするため、このメスを小ケージに移すことになりました。大ケージと小ケージは金網で仕切られているのですが、ミカドガンのオスは移動してしまったメスのことをあきらめず、今も1日中金網に張り付き、インドガンのメスに鳴きかけています。
コウノトリの「子育てエリア」に来た際は、このようなガンたちの微妙な関係に注目してみるのもおもしろいかもしれません。
写真上:インドガンを見つめるミカドガンのオス
写真下:連れ添って歩くインドガンのペア
〔多摩動物公園南園飼育展示係 中島亜美〕
(2014年06月06日)
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