2011年2月25日の記事でご紹介しましたが、上野動物園では今年、ニホンツキノワグマのメス2頭が冬眠し、そのうちの冬眠施設で冬眠していたクーが、2月14日に2頭出産しました(残念ながらと2頭とも死亡)。
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「ツキノワグマの出産と死亡」
しかし、なんと通常の寝室で冬眠していたタロコも2月25日に1頭出産し、こちらの子どもは2011年5月27日に初公開しました。
タロコが冬眠し出産した場所はクーがいた冬眠施設と違い、観察用の暗視カメラや空調設備はありません。
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「ツキノワグマ、今年は2頭が冬眠」
タロコはクーと同様、今回が初産で、妊娠期間は171日間でした。観察用のカメラが設置されていないので、子の存在は鳴き声を頼りに確認するしかありません。不安な日々が続き、生後7日目に初めて授乳を確認したときには、一安心しました。鳴き声から多分子は1頭ではないかと思っていましたが、目視で初めて確認できたのは生後22日目のことでした。
4月22日には冬眠明けを示すタロコの糞を確認し、冬眠日数は100日間でした。その後、親子は生後81日目の5月17日に初めて産室から出て、元気な姿を見せてくれました。
ツキノワグマの子は生まれたとき体重が約300グラムといわれていますが、5月末には体重が4キログラムになり、乳以外にも、少量ですがリンゴなども食べられるようになってきました。
私は今回の冬眠チャレンジが初めてでしたが、前任者が冬眠チャレンジの基礎を作り、5回目にして初めて冬眠出産に成功したのは、今まで携わってきた全員の努力が実を結んだのだと思います。今回の経験を活かし、今後は冬眠施設での出産、子育てに向けて努力をしていきたいと思います。
現在展示室と寝室との出入りを自由にして、親子を放飼場に出す準備をしていますので、ごらんいただけないことがあるかもしれませんが、親子だけでなく、無事に冬眠明けしたクーや父親のソウも是非見てください。
〔上野動物園東園飼育展示係 野島大貴〕
(2011年06月03日)