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大地震に遭遇したゴリラたち
 └─上野  2011/04/15

 2011年3月11日、午後2時の食事タイムが終わって、上野動物園のゴリラたちもそれぞれお気に入りの場所でくつろいでいたときでした。地震でゴリラ舎全体が大きく揺れました。滝のある第1放飼場にはハオコグループ5頭、隣の第2放飼場にはピーコ、室内にはムサシがいました。

 私たち飼育担当者はゴリラ舎内の調理場で夕食作りをしていましたが、ものすごい揺れで身動きができない状況でした。

 調理場はムサシの部屋近く、ピーコのいる第2放飼場を見渡せる観察窓も目と鼻の先でしたが、ゴリラたちの驚く声は聞こえてきませんでした。これまで地震が起きると、真っ先に絶叫するピーコとムサシも、このときばかりは声も出せないほどの驚きだったのでしょう。

 大きな揺れが収まったのでゴリラたちのようすを確認しに行くと、ムサシは部屋の壁から壁にわたしてあるロープの上に乗っていて、直接の揺れを避けたようでした。

 来園者のほとんどがまだしゃがみ込んでいる中、観覧通路側からハオコグループのようすを見に行くと、ハオコは落ち着きなく放飼場内を歩き回り、あたりには興奮時に特有の強いゴリラ臭がただよっていました。モモコは放飼場中央部にある擬木の切り株の上まで登り、その腕にはコモモがしっかりしがみついていました。ほかのメスたちはその場にじっとしていました。

 地震の約20分後、まだ切り株に登っていたモモコとコモモをハオコが両腕で抱くようにしていて、そのようすは、家族を安心させようとする行動に思えたという報告もありました。

 地震直後からゴリラたちを室内へ入れる作業を開始しましたが、余震でガタガタいう室内扉の音を怖がって、モモコ親子、トト、ナナは結局夕方になるまで部屋には戻りませんでした。

 その後数日間はゴリラたちも落ち着かない状態でしたが、最近では余震にもさほど驚かなくなり、もとの生活に戻りつつあります。

〔上野動物園東園飼育展示係 北田祐二〕

(2011年04月15日)



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