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ペンギンが吐き出した小石
 └─葛西  2010/04/16

 野生のペンギンでは、胃の中から小石が見つかることが知られています。これは小石を飲み込んでいるためで、珍しいことではないようです。その理由として、体の比重を重くし、潜水しやすくするためともいわれていますが、野生のペンギンが必ず小石を飲み込んでいるわけではなく、また、潜水のあまり必要のない飼育下でも小石を飲みますので、少なくとも潜るために必須の行動ではないようです。

 葛西臨海水族園のペンギン放飼場には、土を敷きつめた場所があり、そこには砂利も混じっています。飼育作業中のかぎられた観察時間内にも、ペンギンが小石を吐き出すところをときどき目にするので、実際はよく飲み込んでいると思われます。

 さらに、小石だけでなく、換羽で抜けた羽や草なども飲み込みます。これは体の比重とは実質上無関係です。放飼場を観察すると、吐き出された玉状の羽や草の塊が落ちているので、飲み込んでいることがわかります。最悪の場合、プール内に落ちた硬くて尖ったもの(何かの部品に使われた鉄片、短い鉛筆など)を飲み込み、それが胃壁を突き抜けて内蔵にささり、死亡した個体もあります。

 飼育下では、一連の行動の一部だけが強調されて現れていることがよくありますが、上記のような状況から、「飲み込む」のは一種の本能的な体の欲求にもとづく行動ではないかと思えます。かならずしも正確な表現ではないかもしれませんが、私は簡単に「飼育下の誤飲癖」と呼んでいます。あるいは、変形した「遊び」の一種かもしれません。そのせいか、この行動は幼鳥に多いように感じます。とはいえ、飼育下であっても、この「行動」を詳しく調べることはむずかしく、実際のところ、何のためにおこなわれているのかはよくわかりません。

〔葛西臨海水族園飼育展示係 福田道雄〕

(2010年04月16日)



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