上野動物園西園にある小獣館の地下では、さまざまな夜行性の哺乳類を飼育しています。小獣館では、
先週お知らせしたフクロモモンガと同じ部屋でフサオネズミカンガルーを飼育していますが、このたび、フクロモモンガに引き続き、フサオネズミカンガルーにも赤ちゃんが生まれました! 上野動物園でのフサオネズミカンガルー繁殖は、2007年4月以来です。
「カンガルー」と名がつくものの、ネズミカンガルーの後ろ足は「原始的」で、ジャンプはあまり得意ではありません。カンガルーの祖先とみなされていますが、カンガルーとは別の科(ネズミカンガルー科)に分類されています。
2009年の4月中旬からメスのお腹が目立つようになり、5月18日、母親の袋(育児嚢)から子どもの右手がちょっと出ているのを確認しました。それから毎日、尾が出たり足が出たり……。母親はときどき袋の中の子どもをなめ、世話をしていました。
そしてついに、2009年6月1日の朝、子どもの全身が袋から出ました! 赤ちゃんは成獣より濃い毛色をしていますが、おとなのフサオネズミカンガルーのミニチュア版といった感じで、しっかりと立つことができます。この日は1分くらいで袋に戻ってしまい、夕方まで出てくることはありませんでした。
次の日の朝、子どもは袋から出ていましたが、やっぱりすぐに戻ってしまいました。夕方は、少し慣れたのか、しばらく外に出ていました。
成長した子どもの体が母親の袋にほぼ入ってしまうのには感心してしまいますが、これは袋が伸びて大きくなっているおかげです。でも最近は、子どもが全身入れたつもりでも尾がはみ出していて、母親はうしろに自分の尾、前に子どもの尾を出したまま、展示室の中を跳ねています。
母親が自分の両足と尾を前に投げ出して休息の姿勢をとり、袋の中の子どもをなめて世話をし始めると、子どもも袋から出てくるようです。子どもはときどき外を興味深そうに見回しますが、やっぱり不安なのか、ふたたび顔を袋の中に入れ、動かなくなってしまいます。物音がすると、びっくりして袋の中にもぐりこみますが、頭隠して何とやら、足と尾は外に出たままです。そして、落ち着くと子どもはまた出てきます。
今のところ、開園時間中は母親が活動しており、子どもが袋の外に出ることもほとんどなく、尾だけが出た状態です。しかし、もうまもなく開園時間中も外に出るようになり、かわいいすがたをごらんいただけるようになると思います。
写真上:袋(育児嚢)は縦に開きます
写真下:外の世界へようこそ!(向かって右が母親)
〔上野動物園西園飼育展示係 井上智右〕
(2009年06月05日)