催し物
9/25-10/13「猛獣処分」から70年、戦中戦後の動物園展
 └─2013/09/25

 土家由岐雄さんの童話『かわいそうなぞう』をご存じの方も多いでしょう。太平洋戦争中の上野動物園で、空襲によって猛獣が逃げ出すと危険だからと、ゾウをはじめ、多くの動物が殺されてしまった悲しい物語です。

 毒の入ったえさを食べず、最後まで残ったアジアゾウの「トンキー」が餓死したのは1943年の9月23日。今からちょうど70年前のことです。ただいま上野動物園の西園ズーポケットでは、この70年前の悲惨な歴史を忘れないためにも、企画展「猛獣処分70年 戦中戦後の動物園展」を2013年9月25日から開催しています(10月13日まで)。

 園内に残る貴重な資料をもとに、エチオピア皇帝から戦前に贈られたライオンの「アリ」と「カテリーナ」、中国大陸で兵隊に飼われてすっかりなついたヒョウの「八紘」(はっこう)の写真や、当時園内にあった慰霊碑の銘板などを展示しています。

 戦争が終わったのは1945年の8月15日。焼け野原となった東京で、復興への道を歩む人々の心を支えたのもゾウでした。戦後最初に来日したはな子は、国内最高齢のゾウとして今も井の頭自然文化園で健在です。そして、インドの子どもたちから日本の子どもたちへ平和の使者として贈られた「インディラ」は、現在のジャイアントパンダをはるかに超える大ブームとなりました。

 こうした激動の時代、動物園から日本の社会をずっと見つめていた動物もいます。戦場では弾薬を、動物園では他の動物たちのえさを運んだロバの「一文字」は、戦後新しくできた子ども動物園で人気者となりました。一文字は高齢で歯を失いましたが、多くの方々の協力によって「世界で最初に入れ歯をはめたロバ」となったのです。

 残念なことに、あれから70年たった今でも世界で戦争や内乱は続き、多くの人々や動物たちが犠牲になっています。また、多くの野生動物が絶滅の危険にさらされているのも、私たち人間の活動が原因です。戦中戦後の動物園を見つめ直すことで、人間と動物の幸せな共存について考えてみませんか。

 ◎展示会場は入場無料。2013年9月25日(水)から10月13日(日)、10:00から15:00まで。

写真上から
・トンキー。1943年8月27日撮影
・ロバの「一文字」
・展示会場

(2013年09月25日)



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