催し物
井の頭狸庵にようこそ[2]
 日本人の描く狸&講演会
 └─井の頭 2009/06/05

 井の頭自然文化園で開催中の特設展示「井の頭狸庵にようこそ──のぞいてみるタヌキの真実」では、動物としてのタヌキだけではなく、日本の狸文化についても紹介しています。今回はそのコーナーについてご紹介しましょう。

 現代の人々が思い浮かべるタヌキのすがたは「信楽焼の狸」の影響を強く受けているようですが、丸く巨大なお腹に徳利といった、こっけいなイメージは、20世紀初期にできあがったものです。

 9世紀から13世紀にかけての日本では、「狸」と表わされる動物はテン、イタチ、イノシシ、ノネコなど、里山にくらすさまざまな動物を包括していたと考えられており、おろかでお人好しという要素だけではなく、人間を殺してしまう残忍で凶悪な要素、山の中で人をだます妖怪的な要素など、種々のイメージを含んでいました。日本人の描くタヌキのすがたは、時代や社会背景とともに大きく変わってきたのです。

 特別展示では、よく知られている「かちかち山」などの昔話や、「同じ穴の狢(むじな)」、「捕らぬ狸の皮算用」などのことわざを通して、そこに描かれた狸のすがたの変遷をご紹介しています。古い資料の狸絵からは、日本人が描いてきた狸のすがたが、いかに多様であるかがわかります。また、狸寝入りや狸囃子について、生物学的な解説を試みるとともに、タヌキ汁の味についても職員が考察しています。

 会場では、いろりにタヌキ汁の入った鍋がかかっており、そこを中心に、背負子(しょいこ)、笠と蓑、茶釜、ふいごなど、狸とともに昔話に登場した道具も展示してあります。また、狸の登場する古いアニメや絵本を座って楽しむこともできます。

 特設展示にあわせて、2009年6月21日(日)には、講演会「タヌキと狸 その世界を知る」を開催! 『狸とその世界』や『日本人の動物観』の著者である立正大学名誉教授の中村禎里先生に、「日本人にとって狸とは何か」というテーマでお話しいただきます。また、前回ご紹介した青梅市永山丘陵で里山動物の観察をされている熊谷さとしさんに、「里山のタヌキ」についてお話しいただきます。講演会は要申込。締切は2009年6月9日(消印有効)です。くわしくは、下記リンクをごらんください。

写真:特設展会場

井の頭狸庵にようこそ[1]
 東京の里山にくらすタヌキ&観察会

・講演会「タヌキと狸 その世界を知る

〔井の頭自然文化園教育普及係 天野未知〕

(2009年06月05日)



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