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アジアゾウのお肌の手入れ
 └─上野  2010/01/08

 上野動物園では今、目の下い黒い「クマ」ができたような姿のアジアゾウが見られます(写真)。寝不足のせいではありません。飼育係がゾウのお肌の手入れをしているのです。

 人間が美容や健康を気にするように、上野動物園のアジアゾウたちもお肌やひづめの手入れに気をつかっています。夏は気温が高いので、プールに入って肌の潤いを保つことができます。また、湿気のおかげでひづめが柔らかくなり、飼育係にとっても、夏はひづめを削るのが楽な季節です。

 ところが、冬になると事情は変わり、肌が乾燥してカサカサになってしまいます。アジアゾウは野生では高温多湿な環境で生活しているため、日本の冬のように気温が低く空気が乾燥すると、皮膚がカサカサになって荒れ、ひづめにひび割れが生じることもあります。

 そこで、乾燥しやすい部位に飼育係がワセリンやオリーブオイルを塗り、肌の乾燥を防ぎます。アジアゾウの目の下の黒いクマのような部分は、ワセリンやオリーブオイルを塗ったあとなのです。

 上野動物園では、アジアゾウ3頭を「直接飼育」と呼ばれる方法で管理しています。つまり、飼育係がゾウと同じ空間に入り、直接ゾウに触れ、トレーニングをおこないます。そのため、メスには直接ワセリンを塗ることができます。

 しかし、オスのアティに対しては「準間接飼育」です。つまり、飼育係が動物と同じ空間には入らず、柵越しにトレーニングをおこないます。その結果、アティの肌にオイルなどを直接塗ることができず、これまで肌の手入れができませんでした。

 しかし、昨年(2009年)から開始した「ターゲットトレーニング」が順調に進んでいるため、この冬から、ターゲットトレーニング中にアティの肌の手入れが可能になりました。足や耳だけを柵の隙間から出すよう指示し、柄の長いハケを使って、乾燥した部位にオリーブオイルを塗っています。

 冬のあいだ、こうしたお肌の手入れのおかげで、ゾウたちは健康にくらしています。その反面、ぼくら飼育係の手はカサカサに荒れてしまうので、自分のお肌の手入れもしなくては、と思う今日このごろです。

※ニュース「アジアゾウ『アティ』のターゲットトレーニング」(2009年07月31日)

〔上野動物園東園飼育展示係 三塚修平〕

(2010年01月08日)



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