※定員に達したため、募集終了しました。
東京動物園協会野生生物保全基金は、野生生物保全活動に取り組む方々の活動を支援するために助成金交付事業をおこなっています。助成対象となった保全活動について広く知っていただくために、報告講演会を開催します。会場は上野動物園内です。
今回の講演は10題です。申込は
先着順です。お早めにお申し込みください!
開催日時・場所
日時 2024年12月14日(土)13時00分〜16時50分(予定)
場所 上野動物園内 管理事務所3階
対象 80名
講演① 動物園の環境条件に合わせたサシバエ活動区域の特定手法の開発
講師:小針大助さん(茨城大学農学部 准教授)
本研究では,吸血昆虫の一種であるサシバエの各種防除対策のための基礎情報として,動物園内のサシバエの集中発生区域の特定と,それに基づく防除対策について検討した。調査は国内8園で実施したが,猛暑の影響か,いずれの園でも9月半ばまでサシバエはほとんど確認されなかったため,10月以降,近隣6園についてあらためて集中発生区域調査を実施し,防除効果調査は上野でのみ11月に実施した。その結果,各園ともサシバエの集中発生区域の経年同所性が示唆された。また防除効果調査では,駆除から10日で外部侵入が疑われた。以上より,各園ともサシバエの発生区域は特定の場所に集中し,その周辺での集中防除が必要と考えられた。
◎講師プロフィール 茨城大学農学部および東京農工大学連合農学研究科准教授。2004年東北大学大学院農学研究科博士後期課程修了。学位博士(農学)取得。その後,茨城大学農学部助手,同講師を経て2013年から現職。2015年日立市かみね動物園との共同研究プロジェクトを開始。2020年には千葉市動物公園も加え,3機関研究連携プロジェクトZoo Science Hubを展開。専門分野は応用動物行動学,動物管理学,動物福祉学。 | サシバエ |
講演② 国内に生息する野生鳥獣の鉛汚染状況の実態調査
講師:牛根奈々さん(山口大学共同獣医学部One Welfare教育研究センター 助教)
北海道以外の地域では、野生鳥獣の鉛汚染実態が明らかにされていません。本研究は実態把握を目的として、傷病鳥救護組織と有害鳥獣駆除団体の協力と学術捕獲を通して生体の血液中の鉛濃度(体内を循環する鉛の濃度)を測定しました。2022年6月から2024年3月に、提供いただいた454の生体サンプルを対象に、鉛の汚染傾向を分析しました。その結果、これまでに報告されている猛禽類やカモ類以外にも、多様な鳥獣に鉛汚染が発生していることがわかりました。報告会ではこの他、世界で初めて明らかになった調査結果と、そこから考えられる私たち人と含めた動物の健康へのリスクについて、発表します。
◎講師プロフィール 山口大学共同獣医学部One Welfare教育研究センター 助教。博士(獣医学)。鳥類標識調査員。専門分野は野生動物医学、法獣医学、動物福祉学。愛玩動物から動物園動物、そして野生動物の動物福祉をテーマに、環境汚染物質の生体影響調査、適正飼養や動物虐待の調査を実施している。 | ハヤブサ |
講演③ 刺し網漁による海鳥混獲の実状把握~ウミガラスとエトビリカの保全を目指して~
講師:鈴木康子さん(バードライフ・インターナショナル東京 主席海洋スペシャリスト)
環境省指定の絶滅危惧種を含む、多くの海鳥が犠牲になっている刺し網漁による海鳥混獲の現状把握のため、北海道北西部の漁業者と協働でデータ収集をおこないました。報告された海鳥混獲数は予想に反し少なく、その理由は海鳥繁殖期と漁期のズレや、その他人的要因も関わっていることが考えられました。活動3年目の集大成として、普及啓発のためのリーフレットを作成しました。内容は、混獲とは何か、刺し網漁で混獲が起きる仕組み、本活動と葛西臨海水族園と協働の対策開発実験の紹介などで、漁業の現場で鳥の種判別に役立つイラストも含めました。NGOと研究者、漁業者らが協働で環境問題の解決に向けて取り組む一連の活動についてお話しします。
◎講師プロフィール バードライフ・インターナショナル、海洋プログラム、主席海洋スペシャリスト。野生動物医学・生態学を学ぶために渡米。アメリカ西部における海鳥保全と、水産資源回復の間の軋轢に関する研究に14年間従事。2018年の帰国後はバードライフのグローバルチームの一員として、海鳥と漁業の共存を目指すため、日本の漁業者、サプライチェーン、行政、一般市民への働きかけをおこなっている。野生生物学博士。 | ウミガラス(撮影:佐藤 信彦 氏) |
講演④ オキナワトゲネズミ・ケナガネズミの域外保全を目的とした基礎研究
講師:渡部大介さん(特定非営利活動法人どうぶつたちの病院 沖縄 野生生物保全研究部 研究員)
オキナワトゲネズミやケナガネズミは沖縄島北部の「やんばる」と呼ばれる森林域にのみ生息しています(ケナガネズミは奄美大島・徳之島にも生息)。やんばるの森では、かつてトゲネズミやケナガネズミは絶滅したのでは、と言われるほど個体数が減少していましたが、現在は外来種対策等によって少しずつ生息域を拡大してきています。しかしながらいまだに交通事故や感染症等の脅威にさらされており、絶滅を回避できたとはいえない状況にあります。こうした状況を克服する一つの手段として飼育下繁殖がありますが、野生下での生態が未解明のままでは成功は困難です。そこで我々はこれら希少ネズミの生態調査を実施し、得られた情報や取り組みについて紹介します。
◎講師プロフィール 愛媛県生まれ。宮崎大学農学部食料生産科学科卒業、同大学院農学工学総合研究科博士後期課程修了。博士(農学)。2005年より15年間、宮崎市の動物園に飼育係として勤務し、2017年からアマミトゲネズミの生息域外保全事業に携わり、国内初となる繁殖成功を経験する。2020年より特定非営利活動法人どうぶつたちの病院沖縄に所属し、野生生物保全研究部研究員として勤務。 | オキナワトゲネズミ |
講演⑤ 国内希少野生動植物種アカモズの生息域外保全確立に向けたファウンダー導入
講師:松宮 裕秋さん(長野アカモズ保全研究グループ 代表)
アカモズは国内希少野生動植物種の鳥類であり、特に本州の個体群は絶滅寸前の状態にある。当グループは関係機関と連携し、域外保全における飼育個体群の確立を目的とした動物園へのファウンダー導入をおこなっている。2023年はアカモズの移送に先立って、近縁の普通種であるモズの卵の移送をおこない、移送条件を検討した。続いて、アカモズの分布と巣を把握したうえで、捕食者対策をおこなって採卵対象の巣を保護し、それらの中から計画的に採卵した1卵と、親鳥の繁殖放棄等の要因で保護した28卵及び雛2羽を豊橋総合動植物公園へ移送した。移送した卵及び雛から11羽が巣立ちに成功し、飼育個体群におけるファウンダー確立を達成した。
◎講師プロフィール 1994年生まれ、長野県在住。信州大学を卒業後、会社勤めの傍ら、鳥類をはじめとする生き物の調査・研究・保全活動に携わる。アカモズの保全は10年以上取り組んでおり、2021年には大学時代の研究室のOB・OGや地元の協力者と共に、任意団体「長野アカモズ保全研究グループ」を結成。アカモズと共生する地域社会の実現を目指して、日々活動中。 | アカモズ |
講演⑥ 野生メダカはいつ・どこで・どのように繁殖している?動画撮影とDNA解析から迫る
講師:近藤湧生さん(大阪公立大学理学研究科動物社会学研究室 特任助教)
ミナミメダカ(以下、メダカ)は、標準体長が3〜4 cmの小型淡水魚です。メダカは、古来より日本人に親しまれてきた観賞魚であり、1世紀以上にわたって生理学・遺伝学・発生学など、様々な分野で用いられているモデル生物です。しかし、野生における基礎生態の知見はほとんどなく、繁殖の開始時間に関する特定には至っていません。そこで、本研究では、繁殖期間中のメダカの行動を明らかにすることを目的に、ビデオカメラを野外に設置して夜間の動画撮影をおこないました。本講演では、昨年度1年間実施した野外におけるメダカの生態解明に向けた取り組みと、少しずつ明らかになってきたことについてご紹介したいと思います。
◎講師プロフィール 大阪公立大学理学研究科の特任助教。ミナミメダカの繁殖生態をメインに研究。水槽実験と野外調査を組み合わせ、メダカの生態解明に挑戦中。小中高の教員免許を活かし、メダカを使った出前授業にも注力。趣味はドライブ。 | ミナミメダカ |
講演⑦ アジアゾウ繁殖保全に関わるタンパク質の探索
講師:佐藤陽子さん(鳥取大学農学部共同獣医学科 教授)
アジア地域に生息するアジアゾウの個体数は年間約3%の割合で減少を続けており、保護増殖には人工的な手法の補助が必要となってきた。通常、哺乳動物は精巣および精巣上体は、陰嚢に包まれ体腔外に存在し、精子形成や精子成熟は体温より低い状態でおこなわれる。ゾウ精巣が体腔にあるという特異性に着目し、タイの共同研究者とおこなっているゾウを用いた熱ストレス下での精子形成に関わる研究について報告します。
◎講師プロフィール 東京大学大学院理学系研究科で博士取得後、カリフォルニア大学で博士研究員時に生殖生物学の分野で研究を始め、帰国後CREST研究員としてヒト造精機能障害の研究を、その後、長崎大学、山口大学、東亜大学、東海大学を経て現在鳥取大学農学部共同獣医学科にて、哺乳類精子形成過程の研究をおこなっている。 | アジアゾウ |
講演⑧ 紀ノ川下流の止水域における生態系の研究
講師:木村俊介さん(和歌山県立向陽高等学校 理学部 部長)
和歌山県北部に紀ノ川という一級河川がある。この紀ノ川下流域において、魚類の生態系について考察した文献が30年以上発表されておらず、現在の生態系が不明瞭である。また、特に止水域に焦点をあてて環境評価した文献がほとんどない。よって研究目的を「水生生物の生息状況を調査し、紀ノ川下流の止水域の環境を評価すること」として調査をおこなった。2023年5月から2024年3月までの調査で、27種類の水生生物を採捕することができた。そのうち16種類が在来種、11種類が外来種である。また東西の止水域では同じ時期に採捕できた魚類組成が異なる。今回はオイカワ、スゴモロコ属魚類、フナ、ブルーギルに焦点をあてて研究報告をおこなう。
◎講師プロフィール 和歌山県立向陽高等学校理学部は1915年4月に創立し、学校の部活動として自然科学に関する取り組みをおこなってきた。構成する部員が興味関心をもっている分野について探究することを主としており、現在魚類を中心とした生態に強い探究心を持つ部員で構成されている。発表者の木村は淡水魚に興味関心が強く、本研究の主力メンバーとして活動をおこなってきた。現在高校2年生で、部長としてクラブをまとめている。 | 水生生物を採捕し研究をおこなう |
講演⑨ 奈良県生駒市におけるツバメの子育て研究
講師:荻巣樹さん(奈良女子大学附属中等教育学校 5年)
奈良県生駒市の飲食店街、グリーンヒルいこまには20個を超えるツバメの巣が存在し、毎年多くのツバメが子育てをしています。これらのツバメの子育てを2018年から毎年調査し、ツバメの子育てにおける雌雄の役割の違いや子育て時期における給餌回数の違い等を明らかにしました。調査を続ける中で、子育て時期が進むにつれ給餌回数と給餌日数が比例しないことという新たな疑問が生まれました。この疑問を明らかにするためにヒナの糞のDNA解析をおこない、親鳥のヒナへの給餌内容を時期ごとに明らかにしました。7年間の研究からわかってきたツバメの親鳥の繁殖行動についてお話しします。
◎講師プロフィール 奈良女子大学附属中等教育学校5年生。サイエンス研究会生物班に所属。奈良女子大学附属小学校に所属していた2018年度より奈良県生駒市にてツバメの子育ての観察を開始。2023年度の冬には、文部科学省が展開する「トビタテ!留学JAPAN 高校生第8期派遣留学生」に選出され、ツバメの越冬地であるフィリピンで約1ヶ月半、ツバメや地元の方々のツバメに対する意識の調査・保護啓発活動を実施。 | ツバメ |
講演⑩ 希少鳥類における域外保全の推進にむけた繁殖生理生態の解明──ライチョウとハシビロコウを中心に
講師:楠田哲士さん(岐阜大学応用生物科学部 動物繁殖学研究室 教授)
鳥類は外部環境の変化に鋭敏で,環境変化は繁殖に影響します。繁殖を制御しているのは主に日長ですが,光環境以外の要素は家禽も含めほとんどわかっていません。都立動物園とは,ライチョウとハシビロコウの保全繁殖において,繁殖生理生態の研究で以前から連携しています。ライチョウはこれまでの保護増殖事業で,飼育下繁殖に成功していますが,産卵期,産卵数,孵化率等が不安定です。一方ハシビロコウは,世界中で繁殖技術が確立されておらず生理生態も不明なままです。繁殖生理生態の解明やそこから繁殖条件の向上につなげ,生息域外保全に貢献することを目標に,母鳥の生理状態と環境の関係を検討してきたので,その研究概要を紹介します。
◎講師プロフィール 岐阜大学応用生物科学部 動物保全繁殖学研究室 教授。日本動物園水族館協会生物多様性委員会 外部委員。専門は動物園動物繁殖学,動物園学。全国の動物園や日本動物園水族館協会と協働して,主に哺乳類と鳥類の繁殖生理と繁殖行動の研究をおこない,飼育下繁殖の実践や繁殖計画に役立てることを心がけています。また,岐阜地域の希少種ニホンイシガメとヤマトサンショウウオの保全活動に参画し,生息域外保全を担当しています。 | ハシビロコウ |
応募方法
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03-3828-8235 ※受付時間は9時30分〜17時
【締 切】2024年11月30日(土︎)送信分まで有効 ※募集終了しました。
※応募は1組1回のみとします。同じ応募者による複数の応募はすべて無効となりますのでご注意ください。
※同伴者は1名まで参加可能です。
※応募は先着順となります。定員に達した時点で受付を終了いたします。
(2024年11月11日)
(2024年11月17日:募集終了について追記)