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【更新】「サンゴ礁の海」水槽の展示再開と今後について(経緯と展望について追記しました)
 └─葛西 2024/09/25(10/14更新)
 葛西臨海水族園では、2022年7月より「サンゴ礁の海」水槽で、大型水槽でのサンゴ類の展示に取り組んでいます。当園では初めての試みで、約2年間の展示を通じて得た課題をふまえ、照明や水質改善などの設備改修をおこなうために、2024年9月に改修工事を実施しました。

 改修工事にともない、展示生物の数が少なくなっています。水槽の環境が整い次第、順次生物を導入して展示を充実させていきます。

 サンゴ類とナマコや貝のなかまは2024年末ごろに、その後、魚類は水槽内の状況を見ながら追加していく予定です。

 少しずつ展示が充実していく「サンゴ礁の海」水槽のようすを見守っていただければと思います。当面のあいだ、ご来園のみなさまにはご迷惑をおかけいたしますが、ご理解くださいますようお願いいたします。

2024年10月14日追記:経緯と展望


「サンゴ礁の海」水槽

 現在、世界中の多くのサンゴ礁は、地球温暖化や海洋の酸性化などのさまざまなストレスにより、危機的な状況にあります。日本に現存する健全なサンゴ礁も2040年代には消滅すると予測されています。こういった状況の中、水族園では造礁性イシサンゴ類(以下サンゴ)の生息地と連携をとり、将来、飼育しているサンゴを生息地へ再導入[※1]できるよう準備を始めました。

 サンゴに限らず生き物を自然へ再導入するときは、本来その地域に生息していなかった種や、遺伝的に異なる個体群を入れないように、十分に注意しなければなりません。そのため、現在水族園では、「サンゴ礁の海」水槽に入れる生きものをすべて特定の地域から集めています。


サンゴを輸送するようす。再導入をできるように集める場所を限っている

 また、サンゴを健全に飼育するための設備も必要です。水族園では、2022年7月より、「サンゴ礁の海」水槽にてサンゴの展示に取り組んでいます。水量約200トンの大型で閉鎖循環方式[※2]の水槽でのサンゴの飼育は、全国的にもあまり例がなく、水族園でも初めての取り組みです。

 約2年間サンゴを飼育した結果、よりよい状態で飼育するために、水槽内の流れや照明を改善する必要があることがわかりました。その工事をおこなうには、水槽の水をすべて抜く必要があったため、展示を休止して水を抜き、すべての生きものを取り出しました。


工事に向け水槽内の生きものを取り出すようす

 話は少し変わりますが、多くの水槽では、ろ過機を使って水をきれいに保っています。特にアンモニアなどの有害な物質を分解するために、ろ過機の中に住むバクテリアの力を利用しています。一度水を全部抜いてしまうと、バクテリアも一から育て直さなければならないので、ろ過機がしっかり働くようになるまでには時間がかかるのです。

 そのため、「サンゴ礁の海」水槽は生きものの数を少なくして展示をおこなっています。今後、設備が整い次第、順番に生きものを入れていく予定です。まずはサンゴや貝、ナマコのなかまの展示を今年の年末ごろに予定しています。さらにようすを見て、さまざまな種類の魚も展示していく予定です。徐々に展示が充実していく「サンゴ礁の海」水槽のようすを見守っていただければと思います。

 日本の健全なサンゴ礁が、これからも生息域内で維持され続けることが何よりも望ましいことです。一方、もしもの際に日本のサンゴ礁を守る手助けができるよう、今できることに取り組むことは、水族園の使命のひとつと考えています。

 現在は展示のようすがさみしく、ご来園のみなさまにはご迷惑をおかけいたしますが、ご理解くださいますようお願いいたします。

^ *1 再導入:絶滅または絶滅の危機にある種を、過去に生息していた地域に再び定着させることを試みること。
^ *2 閉鎖循環式:飼育水をポンプでろ過機に送り、水中の汚れを取り除いて飼育をおこなう方式。

(2024年09月25日)
(2024年10月14日:「経緯と展望」を追記)



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