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裏側で活躍するフクロウの「ゴロッチョ」──9/20
「じゃ、この通路は一列にならんで。むこうから、フクロウが飛んでくるから、体をさっと脇によせてください!」

 ──ベルギーの動物園「パルク・パラディジオ」からお客さんをむかえ、いっしょに園内をまわっていたときのことです。キジ舎の裏側に入り、細長い廊下のようなキーパー通路へと足をふみいれました。



 担当職員から、フクロウに気をつけるよう、上のような注意がありました。「フクロウ?」──疑問に思いながら、先頭に担当職員、つぎにベルギーのスタッフがつづき、計4人が一列にすすんでいきます。

 廊下は「く」の字型の細長い通路です。角を右に曲がったとき、いました、ずーっと奥、つきあたりの天井ちかくにフクロウが!  じっと、こちらをうかがっています(写真)。



 なおもすすむと、フクロウがついに飛び立ちました。十数メートルのかなたから、バサバサと羽ばたきながら向かってきます。こちらもよけようとして、「ををっっ」とつぶやきながら思わずからだを傾けてしまいました。

 フクロウはあっというまに、われわれ隊列のわきを抜けていきます。振りむくと、フクロウは通路の角を曲がって飛び去って行くところでした。

 4人でそっと引き返すと……通路入口付近にいたフクロウが、ふたたびワサワサと羽ばたきながら、もといた場所へと帰っていくのでした。



 さて、お客さんにも見えない裏側通路で、フクロウがなぜ放し飼いになっているかというと……。

ネズミをつかまえるためなのです。

 最近、都市部で増えているといわれているクマネズミ。飼育舎では、餌をぬすんだり、フンをしていったりするので、動物園としては悩みの種です。粘着紙などのトラップもかけてみましたが、効果なし。

 そこでまず、天井裏をなくしてしまおうと、天井板を完全にとりはずし、同時に、通路の整理整頓を徹底したら、ネズミも減りました。

 それでもフンがなくならないので、「秘密兵器」を放つことになりました。それがフクロウの「ゴロッチョ」(1997年5月7日保護。6歳、オス)です。



 つまり、フクロウにネズミを捕まえる手助けをしてもらっているのです。8月23日に放し、その後、ネズミのフンも見なくなりました。通路を整頓した段階でネズミ対策としてはかなり効果があったようですが、フクロウが吐き出す「ペリット」(獲物を丸のみにしたあと、毛や骨などの不消化物をまとめて吐き出すのがペリット)を見ると、黒い色をしたものがあったので、クマネズミを食べてくれたようです。


 ただし、その後のペリットの色は白。これは餌としてあたえているハツカネズミの色です。通路の整頓でかなり成果があったうえに、きっとフクロウの存在で、クマネズミたちも近寄らなくなったのでしょう。



 キジ舎は表門を入ってすぐ右手にならんでいる展示舎です。その裏で、目を光らせているのがフクロウのゴロッチョ(夜行性ですから活動は夜ですけど)。ゴロッチョ、えらい!



・ベルギーの「パルク・パラディジオ」



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