上野動物園におけるモモイロペリカンの飼育の歴史は長く、初来園は1920年11月29日と記録されています。1944年の太平洋戦争中に一時飼育が途絶えたものの、1952年7月20日に雌雄各2羽が来園してから、これまでに飼育が途絶えたことはありません。2002年4月2日からは不忍池での放飼を始め、すでに四半世紀を経過しました。
しかし、2004年に国内で初めて高病原性鳥インフルエンザ(HPAI)の流行が確認され、近年では毎年、冬になると全国各地で発生するようになりました。HPAIの発生期にモモイロペリカンを不忍池に放飼したたまではリスクが大きいため、どこかで発生するたびに捕獲し、安全な屋内施設に避難させていました。
広い不忍池と比べれば、避難先は狭く、アニマルウェルフェア(※)は大きく低下します。また、捕獲や運搬時のストレスもあり、このような飼育方法を続けるには限界があると考えていました。そこへ多摩動物公園で飼育したいという申し出がありましたので、2025年6月4日に移動することになりました。したがって、現在飼育中の4羽は昨年の10月から西園カバ舎の寝室に避難していましたが、この夏に再び不忍池にお目見えすることはありません。
長きにわたった上野動物園でのモモイロペリカンの飼育はこれで終了となりますが、今後は多摩動物公園に引き継がれます。これまでの上野動物園での活躍に感謝したいと思います。
※アニマルウェルフェア:「個々の動物の身体的および心理的状態」のこと

不忍池で飼育していたモモイロペリカン
〔上野動物園西園飼育展示係〕
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