野生のライチョウから精液を採取し、
富山市ファミリーパークへ運んで飼育個体に人工授精をおこなった結果、孵化に成功しました。
今回の精液の採取(採精)と輸送、人工授精は、上野動物園、横浜市繁殖センター、富山市ファミリーパークが共同で実施しました。野生個体からの採精、精液の低温輸送、飼育下での人工授精の一連の流れを実施し、孵化に成功したのはライチョウでは初めてのことです。
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採精した野生のオス個体(2024年5月24日撮影) | 精子の採取(2024年5月26日撮影) |
ライチョウとは
ライチョウは世界で23亜種が知られていますが、その中で日本産ライチョウはもっとも南に分布する亜種です。かつて大陸から日本列島に移りすみ、その後、温暖になるとともに本州中部の高山帯に“取り残された”と考えられています。現在、絶滅危惧種であり、国の特別天然記念物にも指定されている希少な鳥です。
保全への取り組み
上野動物園は公益社団法人日本動物園水族館協会の加盟園館として、環境省が2021年3月に策定した「第2期ライチョウ生息域外保全実施計画」にもとづき、飼育下個体群における遺伝的多様性の維持のために、2021年度から人工採精や人工授精の技術開発に取り組んできました。
今回の経緯
2024年5月24日から27日、乗鞍岳で野生のライチョウ6羽から精液を採取しました。精液を富山市ファミリーパークへ低温輸送し、飼育しているメスに人工授精をおこなったところ、6月28日(金)にひな2羽が孵化しました。孵化したひなは現在、富山市ファミリーパークで飼育されています。
これまで「飼育下での採精」や「飼育個体どうしの人工授精による繁殖」には成功していましたが、「野生のオスから採取した精液を用いて飼育下のメスの人工授精をおこない、繁殖に成功」したのは国内初です。今後もライチョウの域外保全に取り組んでいきます。
孵化したライチョウ
孵化数 2羽
孵化日時 2024年6月28日(金)1羽目は午前3時20分、2羽目は午前10時14分
体重 1羽目15.4g、2羽目17.8g
性別 2羽とも不明
(2024年06月28日)