上野動物園両生爬虫類館(ビバリウム)の裏側には、水処理施設があります。これはビバリウムの水循環・濾過・水温維持のための装置です。
さらに、その裏側には、高さ5メートルほどのビワの木が数本植えてあります。これらは、ビバリウムがオープンした翌年の2000年6月に、同じ西園内に植えてあるビワの木の種から育てた上野動物園生まれの上野動物園育ちです。
じつは、ビバリウムがオープンした1999年はとても暑い夏で、7月30、31日には、館内の気温が43度を記録し、水処理施設がオーバーヒートしてしまうほどでした。そこで、将来的な対策として水処理施設の周辺に育ちの早いビワの木を植え、日陰を作って日光の水処理施設を保護するとともに、結着した実はガラパゴスゾウガメの餌に使用できれば、と考えました。
さて、あれから10年以上の歳月が流れ、ビワの木も大きくなりなりましたが、まだ「水処理施設を日陰で覆い尽くす」状態には至っていません。しかし、今年はたくさんのビワが実を結び、輝くオレンジ色に色づいたので、6月20日ころから「ビワ狩り」を実行しました。もちろん、当初の目的の一つである「ガラパゴスゾウガメの餌」に使用するためです。給餌時間に、たくさんのビワをガラパゴスゾウガメの目前に置いたところ、一粒たりとも残さずにきれいに食べてくれました(多分、大喜び)。それを見ていた来園者の口から「ビワだよ、いいな〜」「家ではまだ食べてないよ」「美味しそう」といった感嘆のことばが漏れ聞こえてきたほどです。
一方、館内でもたくさんの植物が見られます。これは、動物と動物を取り巻く環境とを同時に理解できるように、また自然に近い展示を楽しむとともに、自然への関心を高めてもらうことを目的に植えられています。
たとえばバオバブ、オオギバショウ(旅人の木)、オクナ・セルラタ(ミッキーマウスの木)、サキシマスオウ、レンブなどが展示を彩っています。
中でもレンブは毎年ピンクの美しい実をつけ、来園者の目を楽しませています。この実は、そのままにしておくと落下して腐ってしまうので、ビワと同じくガラパゴスゾウガメの餌に使用しています。
通常、ガラパゴスゾウガメの餌は牧草や野菜がメインですが、例年この時期は館内外に色づくさまざまな果実が餌に加わり、飼育職員から見ていても、うらやましいほどです。
写真上:ビワを食べるガラパゴスゾウガメ
写真下:館内のレンブの実
〔上野動物園は虫類館飼育展示係 伊東二三夫〕
(2012年07月13日)
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