(2012年03月23日記事訂正──不忍池では1974年以降にもタウナギの採集記録がありました。お詫びして訂正いたします。記事末尾をごらんください。)
「タウナギ」という動物を知っていますか? 名前にウナギとありますが、かば焼きで食べるウナギ(ウナギ目)とはちがって、タウナギ目という別のグループに属します。外見がウナギに似ており、水田を含む淡水でくらすため、タウナギと名づけられたようです。
タウナギは、東南アジアから台湾や中国、朝鮮半島まで分布していて、日本では関東以西の本州と沖縄島で生息が確認されています。しかし、本州での分布に連続性がなく、関西の淀川・大和川水系以外では、ピンポイントでの記録しかありません。
図鑑によると、1912年に京都の二条城で発見され、その翌年に上野の不忍池で発見された記録があります。また、不忍池ではその後、繁殖も確認されています。ただし、国内の生息記録は、自然分布なのか、人為的に持ち込まれたせいなのか正確な記録がなく、謎に包まれています。
このような「謎の生き物」タウナギも、不忍池では目撃情報が絶えていました。1974年に採集されて、上野動物園の西園飼育事務所で飼育した記録が最後でした。
1983年7月15日から1984年3月31日にかけて、上野動物園では池の浚渫作業をおこない、タウナギが出てくるのではとひそかに期待しましたが、結局、姿を見ることができませんでした。
そして一昨日、2012年3月14日のこと、池に落としたモノを探すために底を網で探っていたところ、長さ50センチほどのロープ状の物体をすくいあげました。わずかに動いています。よく見ると、タウナギだとわかりました。もう不忍池にはいないのではないかと思われていたタウナギです。さっそく写真に収め、発見した場所にすぐに戻しました。
最初の発見記録から100年近く、最近の確認から40年近く情報はありませんでしたが、不忍池のタウナギは生き続けていたようです。
タウナギは孵化時はメスで、成長の途中で性転換します。体長34センチメートル以下はメス、46センチメートル以上はオスになるとのこと。その間の体長の個体は、雌雄の性質をあわせもつ「間性」だそうです。また、一部の個体群では、孵化後の仔魚を、オスが口の中で育てる例が報告されています。
何とも不思議な魚、タウナギ。不忍池での再発見速報でした。
〔上野動物園西園飼育展示係 神門英夫〕
(2012年03月16日)
○訂正とお詫び──本文に「1974年に採集されて、上野動物園の西園飼育事務所で飼育した記録が最後でした」とありますが、2004年8月に採集された記録が残されていました(「どうぶつと動物園」2004年10月号ニュース)。また、不忍池での採集個体を上野動物園内にあった水族館で展示していたことも判明しました。訂正いたします。記事掲載を急いだ結果、調査が不十分となり、間違った情報を掲載したことをお詫びいたします。(2012年03月23日)
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