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オグロヅルの育ての親、タンチョウ
 └─2011/08/12

 上野動物園のツル舎では、いまタンチョウのペアが子育て中です。ひなは1羽で、2011年6月27日に孵化しました。まだ茶色いフワフワした綿のような羽根で覆われています。給餌や掃除の際には、オス親が我が子を守るために、担当者をくちばしでつつこうとしたり、「ハァーッ」と警戒のうなり声を出したりします。鋭いくちばしで攻撃されるととても危険なので、注意が必要です。

 両親に守られながらすくすく成長しているこのひな、じつはタンチョウではなくオグロヅルなのです。卵の産みの親は、タンチョウ舎と同じ並びのケージにいるオグロヅルのペアです。このオグロヅルたちにはちょっと問題があり、自分たちの卵を割ってしまうことがあります。今春も最初に生まれた卵が割られてしまいました。

 しかし、オグロヅルは国内での飼育個体数が少ないため、動物園では繁殖させて増やしたい種の一つで、そこで2番目に生まれた卵は、また割られてしまわないように担当者が回収しました。

 ちょうどその頃、タンチョウのペアは卵を温めていました。卵といってもニセモノの卵です。本物と同じ大きさ、色合いに樹脂で作られたもので擬卵と呼ばれているものです。今年タンチョウも産卵しましたが、これまで順調な繁殖成果を上げてきたので、今年は繁殖を制限することにしました。そこで卵を担当者が採ってしまうのですが、鳥が卵を産み足してしまわないように、代わりに擬卵を置いておきます。

 今回のオグロヅルの卵のように、擬卵ではなく、繁殖させたいほかの種の卵を置いた場合でも、タンチョウは産卵をストップして自分たちの卵として温めます。

 オグロヅルの卵をタンチョウに託してから約1か月間、タンチョウたちは交代で抱卵を続けました。そしてオグロヅルのひなが誕生したわけです。

 さて、タンチョウの両親とオグロヅルのひな。種は違いますが、観察していると固いキズナで結ばれているのは一目瞭然です。

写真:仮親のタンチョウから餌をもらうひな

〔上野動物園東園飼育展示係 生井沢初枝〕

(2011年08月12日)



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