上野動物園の五重塔横「日本の鳥II」では2羽のカケスとニホンリスの混合展示をおこなっています。カケスもニホンリスも、ケージから金網製の空中トンネルを通り、アクリルでできた展示場へ行き来することができ、ケージの展示場を餌場、アクリルの展示場を休息する場所、と区別して利用しているようです。
この展示に井の頭自然文化園から新しいニホンリスがやってきました。2歳のオスの個体で、これでニホンリスは雌雄2頭になりました。
数日間のお見合いを経て、餌場であるケージ内で2頭を合流させてみたところ、オスは初めての場所に戸惑ってしまい、登った丸太の上から動きません。ケージ内に巣箱はなく安心して休む場所もないので、丸太の下に巣箱を置いてみたところ、すぐに活用して休息モードに入りました。
オスがトンネルの渡り方を習得して本来の休息場所に行けるまで数日かかりそうなので、しばらくはケージ内で休息してもらおうと思っていました。
ところが、翌日にはトンネルを渡り、なんとメスの一番お気に入りの巣箱に入っているのです。昨日まで利用していた巣箱はただの踏み台に……。
巣箱を乗っ取られたメスはあせって、2番目に気に入っていた巣箱に新しい巣材を運び始めましたが、好奇心旺盛なオスはこの巣箱も利用する始末。野生でも、1頭のニホンリスが複数の巣を利用したり、複数の個体で同じ巣を利用するといわれていますが、先住していたメスにとっては困った話です。
2頭の観察を続けてみると、メスは巣材の中にすっぽり入りおしとやかに休息するのに対し、オスは体の一部が巣材からはみでるワイルドな休み方をしていることがわかりました。2番目のお気に入り巣箱は、すっぽり入るには巣材が足りないようで、メスがまだせっせと運び入れる姿が見られました。
この2頭の関係がどうなっていくのか、これからもじっくり見守っていきたいと思います。
写真上:巣材を運び入れるメス
写真下:メスのお気に入りの巣箱で休息するオス
〔上野動物園東園飼育展示係 石井淳子〕
(2010年05月14日)
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