「ハダカデバネズミ」という動物をごぞんじでしょうか。ユニークな姿と風変わりな名前をもち、独特の生態を見せるため、ここ数年、テレビや新聞などで紹介されるようになりました。ごらんになった方も多いと思います。
ハダカデバネズミはアフリカ大陸のソマリア周辺でくらしています。野生では地下にトンネルを掘り、群れで生活をしています。温度変化があまりない地下空間で生活するので「ハダカ」になり、大きな「出歯」(デバ)で地中に穴を掘り、モグラのような生活をしているのですが、れっきとした「ネズミ」のなかまです。
群れの個体にはそれぞれ「役割」が決まっています。「女王」「兵隊」「繁殖オス」など、役割の分担のしかたは、アリの社会とそっくりです。
昨年(2009年)12月25日、上野動物園西園の小獣館にいるハダカデバネズミが子どもを産みました。女王は群れに1頭しかいないので、それ以外のメスが子どもを産むことはありません。
出産当日に確認した子どもの数は11頭でしたが、残念ながら3日後に3頭が死亡してしまいました。しかし、残りの8頭は順調に成長しています。
ハダカデバネズミは生後1か月くらいで離乳します。そろそろ、好物のサツマイモやバナナを食べ始めるかもしれません。
ただし、体の成長は非常に遅く、おとなと同じ大きさになるまで1年近くかかります。しばらくは、どれが今回生まれた子どもたちなのか、一目でわかるはずです(写真)。
小獣館でハダカデバネズミをごらんになるときは、子どもの成長はもちろん、女王と他個体との関係にも注意すると、きっとおもしろい行動が観察できると思います。仕事をサボっている雑用係に対して、「働け!」と威嚇をする女王の姿も見られるかもしれませんよ。
写真上:生まれたハダカデバネズミ
写真中:授乳のようす
写真下:寝室
◎これまでのニュース
【動画】
ハダカデバネズミ(2003年11月撮影)
【動画】
ハダカデバネズミ繁殖(2005年3月撮影)
ハダカデバネズミの赤ちゃん誕生(2005年12月09日)
【動画】
ハダカデバネズミ新展示(2006年5月撮影)
〔上野動物園西園飼育展示係 廣田敦司〕
(2010年01月21日)