上野動物園西園の不忍池にはいくつかの島があります。そのうち、カフェテリア近くの休憩所からいちばん近い島が「松島」。そこに、くねった枝振りの木が3本立っているのに気づかれた方はいらっしゃるでしょうか? これは、2009年10月13日の休園日、野生のカワウのために運び入れたものです。
昨年(2008年)の冬、不忍池の整備工事の一環として、ボロボロになっていたカワウの巣台用擬木を撤去しました。また、カワウによって長年にわたって運び入れられた巣材や堆積していたフンも取り除いてきれいにしました。そこにカワウが営巣できるよう、コンクリートを使って、立ち木設置用の穴を造ったのです。
その後、島に運び入れる適当な木を探していたところ、ちょうど東園のホッキョクグマ展示場近くの工事エリアで高木の伐採があったので、それを活用しました。
岸から島まで木を運ぶにあたっては、ガソリンスタンドから無料で提供していただいたドラム缶3個を利用しました。伐採した木に「浮き」としてドラム缶をつなげてから水に浮かべ、ウェットスーツを着た職員3名が池の中を誘導して運びました。
不忍池の中には深くて危険な場所もあるので、池の中を熟知したベテラン職員の指導のもとで作業を進めました。島に木が到着したら、先にボートで島にわたっていた職員が引き上げます。これを繰り返し、かなりの重量のある3本の伐採木を島に運び上げました。
まだ立木が3本だけでちょっと寂しい感じですが、今後追加しようと考えていますので、カワウたちにはもうしばらくのあいだ、新居の完成をがまんしてもらわなくてはなりません。
〔上野動物園西園飼育展示係長 寺田光宏〕
(2009年11月13日)
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