上野動物園の両生爬虫類館ではアメリカドクトカゲを展示していますが、このたび展示室のレイアウトを変更しました。少し前から不具合が生じ始め、だましだまし使い続けてきたのですが、やっと作業に取りかることができました。展示室内の改修工事中は、隣のガラガラヘビの展示室内に区切りを設け、そこにアメリカドクトカゲを入れました。
さて、工事はアメリカドクトカゲの展示室の「リセット」から始めます。大量の土や石、サボテンなどをひたすら運び出すという作業です。すべて取り除くと、なつかしい既存の床面が見え、「ああ~最初はこんなだったなぁ~」といった感慨にひたるひまもなく、新しいレイアウト作業に取り掛かりました。
展示レイアウトの中心になるのは、だいぶ前から準備していた「シェルター」(隠れる場所)です。ワイヤーメッシュでできた屑入れが廃棄になっていたので、その一部を切り取り、上からモルタルで肉付けをして、シェルターの完成です。これを展示室内に置くと、切り取っておいた部分が「窓」となり、中に隠れた動物を観察できるという寸法です。
これは割とよく見られる展示構造です。完全に隠れることができなくても、落ち着ける場所がそこしかなければ、中に入った動物は隠れた気(?)になり、来園者からも姿がよく見えるわけです。
このシェルターに加え、コンクリートブロックやモルタルを使ってレイアウトの核となる部分を作り、既存の展示室にあわせて塗装を施します。こうした「硬い作業」のあとは「柔らかい作業」、つまり、赤玉土や黒土を使って植物を活けこんだり、山砂を入れて整地したりします。最後に、アクセントとして流木を入れれば完成です(こうして書くとあっけないものだなぁ)。
工事が終わった翌日、ドクトカゲを入れたところ、さかんにあたりを嗅ぎまわりながらウロウロしています。しばらく見ていましたが、やはり落ち着かないようすで、シェルターには何度か入りましたが、すぐに出てきてしまいます。動物というのは、こちら思惑どおりには、なかなか動いてくれないものです。
結局、今のところ、既存の擬岩の上で日がな寝そべっているアメリカドクトカゲなのでした。そのうち、慣れてきたらシェルターを使ってくれるような気がします、たぶん。
〔上野動物園両生爬虫類館 木村隆司〕
(2009年08月14日)
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