上野動物園のニホンザルは、ふだんサル山の上やそのまわりで動き回っていますが、夏になると日陰に入り、じっとして動きません。日陰に入ると来園者の方から見えにくくなってしまいます。
ニホンザルは寒さにはめっぽう強いのものの、暑さにはとても弱い動物です。ヒトなら汗を流し、その蒸発によって体の熱を外に逃がすことができますし、イヌなら舌を出して放熱できます。しかし、ニホンザルは体の熱を外に逃がす術をもっていません。
野生のサルなら木陰に移動して暑さをしのげますが、たいていの場合、動物園のサルはそうはいきません。少ない日陰を探し、じっとしているしかないのです。そのうえ、サル山はすべてコンクリートでできていて、真夏のサル山の温度は40℃を超えます。まして、人間より地面に近い体勢で生活するサルたちはもっと暑いでしょう。
そこで、上野動物園ではニホンザルがいる場所の温度を少しでも下げようと、サル山を取り囲む壁にスプリンクラーを設置しました。サル山の前面全体にまんべんなく散水できるよう、設置箇所は3か所としました。
路面への打ち水で地面の温度や気温が下がるのと同様、水をまくことによってサル山と周辺の温度も下がります。また、子ザルの水浴びなど、夏でも活発に動くサルたちのをごらんいただけるようになりました。
スプリンクラーで水をまくのは、日差しが強くて気温の高い日です。時間は、日中気温がもっとも高くなる正午から午後2時ごろ。見ている方も涼しさを感じられるサル山の水まき──夏の上野動物園でごらんください。
〔上野動物園東園飼育展示係 青木孝平〕
・東京ズーネットBB動画「
ニホンザル、プールに飛びこむ」
(2004年7月撮影)
(2009年08月07日)