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マレーグマへの給餌法のくふう
 └─ 2009/04/03

 上野動物園では、オス1頭、メス2頭のマレーグマを交代で放飼場に出していますが、一つ困っているのは、3頭とも飽きっぽく、えさを一通り食べると、もう寝室に戻ろうと扉の前をウロウロすることです……。こうなると、物陰に隠れてしまい、来園者から見えづらくなってしまいます。

 そんなマレーグマの好奇心を刺激してさまざまな行動を引き出そうと、給餌方法も模索を続けています。マレーグマにも来園者にも楽しめるよう頭を悩ませているのです。その中から、今年(2009年)のあらたな試みを二つ紹介します。

 一つめは「ワラプール」。放飼場には水浴び用の池がありますが、冬になると、もともと温暖な地域でくらすマレーグマはのどが渇いた時以外、池に近づこうともしません。池の有効活用を考えていたとき、寝室でワラにまみれて動き回っているマレーグマのすがたを思い出しました。「これだ!」と思い、水を抜いた池にワラを入れ、そこに餌を隠してみました。放飼場にマレーグマを放すと……みごとに作戦成功です! 餌の匂いをかぎつけたマレーグマは、ワラをかきわけ、その中に潜り、おもしろい動きを見せてくれました。するいどい嗅覚と器用な手の動きで餌を探し当てるマレーグマの行動は必見です!

 二つめは「パネルヒーター」です。寒さが苦手なマレーグマたちの寝室には床暖房がついています。寒い日はこの上でゴロゴロしています。そこで、放飼場に木の台を設置し、パネルヒーターを置いてみました。初めて見る木の台にマレーグマたちは警戒し、前足でそっとさわっていましたが、徐々に慣れ、最後にはパネルヒーターに乗るようになりました。しかし、まだ寝室ほど安心できる場所ではないようで、しばらくすると離れてしまいます。

 現在、マレーグマが台の上でくつろいでくれるまで、辛抱強く待っているところです。ただし、暖かい春が先に来てしまうかもしれませんが……。

写真上:ワラプール
写真下:パネルヒーター

〔上野動物園西園飼育展示係(執筆当時は東園飼育展示係) 山本達也〕

(2009年04月03日)



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