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子育てをするカエル、アイフィンガーガエル
 └─2017/03/17

 昨年(2016年)10月から多摩動物公園昆虫生態園の南西諸島コーナーで、アイフィンガーガエルの展示をしています。名前だけ聞くと西洋の言葉を使う国のカエルのように思われますが、台湾および日本に生息するカエルです。日本では、沖縄の石垣島や西表島といった暖かい地域に生息しています。

 このカエルは日本で唯一「子育て」をするカエルと言われ、母カエルは樹洞の水たまりなどに産卵します。卵が孵化したあとも、ときどき戻ってきてはその水たまりに無精卵を産み、それをオタマジャクシのために与えて育てます。

 オスは水の入った竹筒に入り、「ピピピ」と鳴いてメスを呼びます。昆虫園ではなかなかメスが卵を産まなかったのですが、2017年1月20日、ついに産卵しました。何がきっかけになったかはっきりしませんが、湿度を高めに変更したのがよかったのかもしれません。


竹筒内の卵とオス。外にいるのはメス

 卵は竹筒の水面上部の壁面に110個以上産みつけられていました。オスは卵が孵るまで竹筒の中にとどまり、卵が乾燥しないよう守っているようでした。


親の卵を食べた後のオタマジャクシ。腹部がふくらんで見える

 1月28日から2月3日にかけて孵化したのですが、内径4センチ水深4センチしかない竹筒では110匹のオタマジャクシは育たないと思われたので、20匹ほどを竹筒に残し、90匹はいろいろなえさを使って人工飼育することにしました。母カエルは担当者の見ていない間に無精卵を産みに来ており、朝になってオタマジャクシを見ると、すでに卵を食べた後でお腹がパンパンにふくれていました。竹筒内のオタマジャクシは順調に成育し、ほとんど死ぬことなく2月26日に最初の個体が上陸しました。


上陸した子ガエル

 人工飼育のえさは、アイフィンガーガエルの研究者から鶏卵の卵黄が使えると聞き、ためしに卵黄・卵白・全卵を与えてみることにしました。ほかに、コオロギ・腐葉土・ペレット(ナマズ用)・ヤマアカガエルの卵などでも育つか試してみたところ、卵黄・全卵・ヤマアカガエルの卵を与えた個体は、母親の卵で育ったものより1週間ほど成長スピードは落ちるものの、無事に育って上陸しました。他のえさは成長スピードが遅かったり(コオロギ)、すぐ全滅したり(卵白)、ほとんど成長しない(腐葉土・ペレット)という結果でした。やはり、母親の卵がいちばんよく育つようです。

 今回の子育てが一段落して早々の3月11日、また100個ほど産卵しました。今回の卵は少し小ぶりできちんと育つかわかりませんが、この記事が掲載される頃には結果が出ていることでしょう。親のほか、子ガエルやまだ上陸していないオタマジャクシも展示しています。ぜひ昆虫生態園でご覧ください。

※追記:3月11日の卵は3月18日に約20卵が孵化しました。

〔多摩動物公園昆虫園飼育展示係 佐々木愛子〕

(2017年03月17日)
(2017年03月19日更新)


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