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一命をとりとめたケナガワラルー、人の手ですくすく育つ
 └─2008/08/08

 2008年6月25日、多摩動物公園のケナガワラルーの子どもが、母親の袋から顔を出すのを確認しました。当園では初めて生まれた子どもです。目は開いているものの、まだ全身が「丸裸」で、まさに「赤ちゃん」という感じです。

 順調に育てば、夏休みには愛くるしいすがたをお見せできるかなぁ、と思っていた矢先の7月2日、事故がおこりました。

 朝、ケナガワラルーを飼育しているワラビー舎に入った私の目に飛びこんできたのは、フンまみれになって横たわるケナガワラルーの赤ちゃんでした。ピクリとも動かず、同居しているワラビーによるものと思われる軽い咬傷が全身に見られます。見た瞬間、正直、手遅れだと思ったのですが、そっと抱きあげると、かすかに息がありました。

 動物病院に急いで運び、緊急処置にとりかかりました。体温が25℃まで低下していたので、まず、温水に入れて体温を確保しました。状態がよければ親の育児嚢に戻すことも検討するところでしたが、今回はその余地もなく、ただちに人工哺育に切り替えることにしました。

 赤ちゃんは見た目にはまだ丸裸で、触ると頭と背中にうっすら毛が生えている状態です。性別はメスで、体重は 680グラム。便は緑色の水様便で、血液も混じり、安全とはいえない状態でした。

 しかし、ふつうはゴム乳首をいやがって、最初の哺乳ではなかなか飲まないものですが、強い吸引力を確認し、その瞬間、「この子はきっと育つ」と確信しました。

 その後、水様便は2日ほどでおさまり、約1週間後には状態も安定したため、7月15日に退院(?)し、今は飼育事務所ですくすく育っています。

 全身の傷も癒え、被毛も日に日に濃くなっているようです。8月5日現在、体重は 846グラムです。まだ、みなさんの前に出られる状態ではありませんが、近い将来、お会いできる日が来るでしょう。

 写真は2008年7月27日に撮影した哺乳のようすです。

 あっ!申し遅れましたが、彼女の愛称は「メグミ」です。高いジャンプを得意とするワラルー。北京で素晴らしいプレーを見せてくださるであろう、あのバレーボール選手にちなんで命名しました。

〔多摩動物公園南園飼育展示係 高橋孝太郎〕

※同じく多摩動物公園の飼育事務所で育てているアカカンガルーの動画ニュースはこちら

(2008年08月08日)



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