多摩動物公園のサバンナのペリカン池には、2種類のペリカンがいます。モモイロペリカンとコシベニペリカンです。モモイロペリカンは大型で、通常白い体色をしていますが、繁殖期になるとピンク色を帯びるのが特徴です。
このペリカンより小型で、全体が灰白色、腰や脇が赤く見えるのがコシベニペリカンです。コシベニペリカンは、よくモモイロペリカンのひなとかんちがいされます。1987年にコシベニペリカンが来園した当初、飼育係もてっきりモモイロペリカンの幼鳥と思って飼育していました。
ところが、いっこうに白くなる気配がなく、体格もあまりに小さいし、よく観察すると顔もちがうことがわかりました。調べてみると、なんとこの「みにくいモモイロの子」の正体はコシベニペリカンだったのです! 1羽から飼育を始めたコシベニペリカンは、収集により徐々に個体数を増やし、現在オス3羽とメス3羽が、キリンやモモイロペリカンなどといっしょにサバンナの一員として生活しています。
そのコシベニペリカンが最近、営巣行動を始めました。これまでは、オスはオスどうしでかたまり、メスはメスどうしでオスとは離れた場所ですごしていました。2月に入り、オス3羽の中にメスが1羽混じり、ペリカン池の中にある巣台で群れるようになりました。
そこで、木組みだけの巣台に網を張り、池付近に枝を用意したところ、一生懸命枝を運び、巣を作ろうとするすがたを見せるようになりました。しかし、巣台の網の隙間から枝が滑り落ちてしまうため、ペリカンたちはうまく巣が作れないようすです。まだまだ改良が必要で、どのような巣台が彼らにとって心地よいものか、工夫を重ねるつもりです。
メス3羽は2006年12月に導入した個体で、現在推定2歳の幼鳥です。通常、ペリカンは3~4歳で性成熟するといわれています。繁殖にすぐ結びつくことはないと思いますが、オスとメスが行動をともにし、営巣行動を始めたことはよい兆しです。なんとかコシベニペリカンの繁殖につなげたいものです。
〔多摩動物公園北園飼育展示係 坂本千尋〕
(2008年03月14日)
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