昨年(2007年)5月、多摩動物公園のコアラ館にフクロモモンガの若い個体20頭(オス10頭、メス10頭)がやってきました。検疫(動物病院で病気を持っていないか、チェックすること)を終えて、展示場に入れました。
しかし! フクロモモンガたちは展示場にあった擬岩や擬木をかじって、その中に入ってしまいました。姿が見えないけど音はする……といった事態におちいったため、フクロモモンガがかじりそうなものをすべて撤去するために工事をおこないました。展示も一時中止です。
8月にようやく展示を再開したものの、人間に捕まえられたり、移動させられたりした結果、フクロモモンガたちは人を怖がり、姿を見せてくれなくなりました(コアラ館に誰もいなくなる午後5時以降に活動していたようです)。
フクロモモンガが動いている姿を、なんとかお客さんに見ていただきたい!担当者も見たい!
そこで、夜の静かな時間に動いているのを逆手にとり、照明を夕方から明るくして昼夜を逆転させました。また、照明をつけた時間を昼間と思ってもらえるよう、職員が帰る時にはラジオをつけておきました。一方、開園時間中は薄暗くし、音を出さないようにして、フクロモモンガが活動しやすい環境を作りました。
最近は、餌を交換した後や、コアラの食べ残しのユーカリを入れてしばらくすると、巣からモゾモゾと出てきて動いていることが増えました。フクロモモンガを見ていただけるようになり、少しほっとしています。
しかも最近、掃除中に小さい子どもを見かけるようになりました。新展示になってから生まれた子は捕まえられたりした経験がないからなのでしょうか、担当者のようすをうかがいつつ、枝の上を走ったり、ジャンプしたりする姿を見せてくれます。子どもたちは大人のフクロモモンガより体が小さいので、すぐに見わけがつくと思います。
フクロモモンガはふつう、一度に2頭の子どもを産みます。コアラやカンガルーと同じく、袋(育児嚢)の中で子育てする有袋類です。妊娠後約3週間で赤ちゃんは母親の袋の中に移動します。赤ちゃんは袋の中にある乳首に吸いつき、おっぱいを飲んで育ちます。袋に入って2か月ほどすると目が開き、毛も生えてそろい、外に出てきます。袋から出た後も母親の背中にしがみつき、約4か月で独立します。
ちょうど今、お腹がふくらんでいるメスや、背中に子どもを乗せたメスがい見られます。赤ちゃんを乗せたままジャンプする母親の姿は圧巻です。探してみてください。また、オスの頭のてっぺんには白くて丸い部分(臭腺)がありますが、メスにはありません。そんなところにも注意しながら、多摩動物公園のフクロモモンガを観察してみてください。
写真上:フクロモモンガの子ども
写真下:オス。頭に臭腺がある
〔多摩動物公園南園飼育展示係 田辺麻里絵〕
(2008年03月07日)
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