多摩動物公園のチンパンジー飼育展示施設は、2008年5月で完成から丸8年。放飼場にある自慢の大きなアスレチック遊具の木の部分が、雨などの影響で朽ちてきました。そこで1月後半に一部のリニューアル工事を実施しました。
工事のあいだ、チンパンジーたちは放飼場に出られなかったわけですが、ずっと室内にいたわけではありません。というのも、チンパンジー舎の裏側にもう一つ、非公開の放飼場があるのです。「裏側の放飼場って、なんのためにあるの? どうして見せていないの?」と疑問に思われる方もいるでしょう。
じつは、表の放飼場に毎日同じ個体が出ているわけではなく、担当者が毎朝彼らの健康状態をチェックし、個体どうしの相性などを考慮しながら、表に出す個体を決めているのです。しかし、表の放飼場に出られなくても、裏側の放飼場で外に出られるというわけです。また、風邪をひいた個体を早めに収容したり、あたらしく来園した個体とのお見合いの場所として使ったり、裏側放飼場の用途はさまざまです。
裏側といっても設備はなかなかのもので、二つある土管にはフロアヒーターが設置されていますし、給餌設備となるアリ塚も完備しています。しかし、広さや遊具の数では表側にはかないません。
裏側放飼場の土管には、毎年寒くなるとワラを入れてやるのですが、今年はさらに快適ライフを享受してもらおうと、ワラをかなり多めに入れました。チンパンジーたちはワラで寝る場所を作ったり、ワラを体にかけたりして思い思いの行動をとります。ワラの中におやつを隠すと、ふだん動きの少ない高齢個体や大人たち(とくに食いしん坊のナナ)も我先に動きだし、見たことのないような俊敏な動きでワラをかき分け、宝探しのようにおやつを探していました。
「おまえら、そんなに動けたの!?」と、担当者一同びっくりさせられました。なんだかみんな生き生きしているようです。表の大きな放飼場よりは狭いけど、裏の放飼場もいいなとチンパンジーたちが思ってくれたら、こちらも満足です。
「宝探し」はチンパンジーが部屋に戻った後も続きます。それは、飼育係による糞探し。手間は増えますが、彼らが楽しそうなのでOKです。ちょっとしたことで喜んでくれるチンパンジーたち。ただし、飽きてしまうのも恐ろしく早いのです。さて、つぎは何をしてあげようかな!?
写真上:チンパンジー舎裏側にある小放飼場
写真下:おやつ探しに夢中のチンパンジーたち
〔多摩動物公園北園飼育展示課 木岡真一〕
(2008年02月01日)
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