多摩動物公園の昆虫園本館では、昆虫という生き物についてよりよく知ってもらうため、昆虫以外の生き物も展示しています。そのコーナーの一角に、数か月前から登場したのが「サソリモドキ」です。以前は昆虫生態園の「八重山の生き物」コーナーで展示していたのですが、「南西諸島の生き物」というコーナーにリニューアルしたのにともない、本館のほうに引っ越してきたのです。
サソリに似ているからサソリモドキという名前がついたはずなのですが、むしろクモに近いような気もします。毒はもっていませんが、脅かすと、腹部の先端にある肛門腺から強い刺激臭のある液体を噴射して身を守ります。その液体の成分は、なんと濃度80パーセント以上の酢酸!(食用酢の酢酸濃度は約4パーセント。)皮膚につくと炎症を起こしてしまうので注意が必要です。
予備ケースから展示ケースに移動させる際、一度噴射されたことがありますが、その臭いはまさに「酢」そのものでした。このことから、英語で「ビネガロン」という異名もつけられています(ビネガーは酢、食用酢などの意)。
夜行性で臆病な性質のため、たいていは石の下などに身を潜めており、昼間に歩き回るようなことはあまりありませんが、同じ飼育ケースに複数の個体を入れておくと、あっという間に共食いをしてしまうという凶暴な一面も持ち合わせています。なので、展示ケースでは1匹のみ、アクリル板の下にもぐってひっそりと暮らしています。少しでも動いてくれたらもっと面白いのに……とは思うのですが、ユニークなすがたを見るだけでも興味深いと思います。ぜひ一度ごらんください。また、リニューアルした「南西諸島の生き物」コーナーもお見逃しなく!
〔多摩動物公園昆虫園飼育展示係 中澤洋子〕
(2007年10月26日)
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