多摩動物公園では、74頭のニホンザルを飼育しています。ニホンザルには、野菜・果物を中心の餌を与えていますが、中でもキャベツは彼らの大好きなメニューの一つです。
2007年7月上旬、東京都農林総合研究センターからキャベツを無料でいただけることになりました。その数、なんと70玉! そこで、ニホンザルに好物のキャベツを1頭に1玉プレゼントすることにしました。
「好物のキャベツなら、大喜びするにちがいない」という期待のもと、7月26日、ついにキャベツを与える日がやってきました。午後3時、70玉のキャベツを軽トラックに積み、いざサル山へ!
飼育係がやってくると、群れ全体が「クー」と鳴き始めます。「餌がきたぞ!」とでも言っているのでしょうか。これは、好感触! 私たちは2人がかりでキャベツを運び込みました。興味津々なようすで、キャベツの入っている段ボール箱をのぞきこむニホンザルたち。1箱にはキャベツが16玉ずつ入っています。私たちはドキドキしながら、キャベツを出しました。
ニホンザルの反応はというと……最初の16玉には、みんな先を争って飛びついてきました。大きなキャベツを重そうに抱えて持ち去るニホンザルもいます。しかし、次の16玉からは、「またキャベツかよ……」といった感じです。1頭に1玉いきわたるまで争奪戦が繰り広げられるかと思いきや、争う気配もありません。むしろ、「こんなにいらねぇ……」といった雰囲気がサル山に漂っています。結局キャベツは50玉でやめました。
サルたちはキャベツ玉にかじりついたり、1枚1枚めくったり、思い思いの方法で食べています。たくさんあるので喧嘩も起きず、平和な雰囲気です。「明日は完食してくれるだろう」と思いながら、私たちは事務所へ戻りました。
──ところが翌朝、サル山には一面に広がるキャベツの残骸が……。プールには、ちぎれたキャベツがプカプカ浮かんでいます。ニホンザルたちは、すでにキャベツには関心がないようすです。
この状態を目前にして、まず感じたのは、「この暑さの中、これを掃除するのか……?」という絶望感でした。結局、炎天下の中、2人がかりでもくもくと掃除しましたが、2時間以上もかかってしまいました。
ニホンザルたちは飽きるほど好きなキャベツを食べることができ、満足してくれたのではないでしょうか。しかし、「過ぎたるは、なお及ばざるがごとし」。与える量もほどほどにしないといけないと反省しました。
来年もキャベツをいただくことができたら、30個くらいにしてみたいと思います。
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東京都農林総合研究センター
〔多摩動物公園南園飼育展示係 大橋直哉・吉田真理子〕
(2007年10月12日)