2026年2月、多摩動物公園に新たなカップルが誕生しました。タイリクオオカミの「スイ」(メス、2歳)と「カヨラン」(オス、10歳)は、2025年4月から同居を開始し、年齢差のあるペアながらも少しずつ関係を深めてきました。
2026年1月上旬ごろから、2頭のあいだに変化が見られるようになりました。ふだんは休息する時間が多いカヨランが、スイに対して強い関心を示し始めたのです。この時期、カヨランの食欲が減少し、スイの陰部を頻繁に嗅ぐ行動が観察されました。また、スイを追尾する頻度も増加しました。1月下旬になると、カヨランの行動にさらなる変化が見られました。カヨランがスイに対して初めてマウント行動(オスがメスに後ろから乗りかかる行動)を示すようになり、これが2頭の関係性の進展を示す重要なサインとなりました。
そして、1月29日にはスイに発情出血が確認され、繁殖期が本格的に始まったことがあきらかになりました。また、ふだんはほとんど遠吠えをしないスイが、2月9日ごろから頻繁に遠吠えをするようになり、それにカヨランも呼応していっしょに遠吠えを始めました。

スイとカヨランの遠吠え
オオカミは繁殖期になると、ふだん遠吠えをしない個体が頻繁に遠吠えをすることが知られています。この遠吠えは、スイがカヨランに対して示す求愛行動の一環であると考えられます。遠吠えはオオカミにとって重要なコミュニケーション手段であり、なかまやパートナーに自分の存在を知らせるだけでなく、感情を伝える役割も果たします。スイの遠吠えは、カヨランへの関心と愛情の表れだったのでしょう。そして、2月12日にはついに交尾が確認されました。
オオカミの交尾は犬と同様の方法でおこなわれます。オスはメスの背後から乗りかかり、交尾を開始します。交尾が進むと、オスの陰茎が膣内で膨張し一時的にロックされ抜けなくなります。この状態は「結合」と呼ばれ、精子が確実にメスの体内に留まるようにする仕組みと考えられています。結合が起きると、オスとメスは向きを変え、互いに背中合わせの状態になります。この状態は通常10~30分程度続きます。

スイとカヨランの交尾
なお、オオカミは交尾しても偽妊娠になる可能性があります。偽妊娠中のメスは、妊娠していなくてもホルモンの変化が起こり、お腹が膨らみ、乳腺の発達や乳汁の分泌が見られることがあります。
そのため今後も、慎重に観察を続けようすを見極めていきます。順調に進展すれば、4月から出産の準備に入る予定ですので、その際は改めてお知らせいたします。今後もスイとカヨランを温かく見守っていただければ幸いです。
〔多摩動物公園南園飼育展示第1係 杉田〕
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