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季節外れのタガメ繁殖のくふう
 └─ 2025/04/11
 多摩動物公園の昆虫園本館1階の水生昆虫コーナーでは、タガメを展示しています。タガメは日本最大級の水生昆虫で、魚などの水生生物を捕食する水生カメムシ類の一種です。「環境省レッドリスト2020」で絶滅危惧II類に指定されているとおり全国的にその生息数は激減しており、また「東京都レッドデータブック(本土部)2023」によると都内ではすでに絶滅したと判断されています。

 タガメの野外での繁殖期は6〜7月ごろです。昆虫園もこの時期にバックヤードで代々繁殖させ、展示を続けています。しかし、飼育している他の水生昆虫、たとえばゲンゴロウやゲンジボタルなども同じ時期に繁殖期を迎えます。その結果、水生昆虫の繁殖期にはそれぞれ飼育管理に十分な時間が割けなくなることが課題の一つでした。

 そこで、2023年からは繁殖時期をずらしてみたところ、2024年には成果が得られるようになりました。まだ充分な検証ができていないものの、成功のポイントは日長と水温のようです。日長は点灯を14時間、消灯を10時間に設定して夏の日照に合わせた条件にしています。水温は試行錯誤の結果、24℃以上が望ましく、22℃以下では産卵が見られても孵化率が悪かったり、孵化幼虫がなかなか育たなかったりしました。30℃以上の高水温はまだ試していませんが、孵化率が悪くなるとの報告もあります。こうしたくふうによって、2025年は1月にタガメの繁殖に成功し、その後も成功事例を重ねているところです。

 タガメは生息数が安定している地域もまだあるようですが、冒頭でもお伝えしたとおり全国的に見ると激減している昆虫です。生息地への影響を最小限にするために、可能な限り採集に頼らず、繁殖個体で展示を続けていけるよう、今後もくふうを続けていきます。


2025年1月に生まれたタガメの成虫

〔多摩動物公園昆虫園飼育展示係 草野〕

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