2025年1月22日追記:
ヒマラヤタール「ローツェ」(オス)の展示を再開します。
2025年1月14日追記:
ヒマラヤタール「ローツェ」(オス)は健康管理のため展示を中止しています。
新年を迎えて寒さもよりいっそう厳しくなってきた近頃ですが、みなさんの寒さ対策はいかがでしょうか。私たち人間は暑いときは薄着、寒いときは厚着など衣服を調節して外気温の変化に対応しています。
では、動物たちはどうでしょうか? ヒマラヤタールは寒くなるにつれて冬毛に、暖かくなると夏毛に生え変わる「換毛」をします。多摩動物公園のヒマラヤタール展示場のあいだにある階段を上ったところから見ることができるオスの「ローツェ」は、現在ひときわ目立つふさふさとした冬毛でおおわれて華やかな姿をしています。歩きながら毛をなびかせている姿は非常に魅力的です。

ヒマラヤタールのオス「ローツェ」
メスも換毛しますが、オスほど大きな変化はなく体全体の毛が少し長くなり、毛の色が少し薄くなる程度と見た目だけでは違いがあまりわかりづらいです。メスの「レタス」の夏と冬の毛の違いを写真で見比べてみましょう。

ヒマラヤタールのメス「レタス」の夏(左)と冬(右)の姿
このように2枚の写真を見比べると色の違いや毛が伸びていることがわかりますが、やはりオスとメスで冬の毛の生え変わりにはたてがみの有無や、毛色に変化があるかなど大きな違いがあります。ヒマラヤタールは、その名のとおりヒマラヤ山脈周辺の標高2,000~4,000mの山岳地帯に雌雄ともに住んでいますが、なぜ冬季の毛並みに違いがあるのでしょうか。
それはヒマラヤタールの繁殖期が秋から冬にかけての冬毛におおわれた時期であることと関係しているのかもしれません。たとえば、繁殖期のオスでは、首から胸部にかけての体毛の色とオスどうしの順位とのあいだには強い相関関係があるとの報告があります。オスどうしの闘争行動とメスへの求愛行動の両方で、淡い色の体毛をもつオスのほうが濃い色の体毛をもつオスよりも優位だったそうです。
このように繁殖期にはオスどうしで争い、メスへのアピールとしての目的を兼ねた立派な毛が生え、メスは冬の寒さをしのぐことを主目的とした冬毛が生えるため違いがここまで顕著にみられるのだと思います。まずはオスの冬の装いを鑑賞しつつ、毛並みのもつ役割を想像しながら動物を観察してみるのもおすすめです。
間もなく春が来ると、りっぱな冬毛は抜け始め夏毛へと変わります。冬毛のヒマラヤタールが見られる時期もあとわずかです。暖かくなる前に冬毛のヒマラヤタールを見に来ませんか? みなさまも暖かくして動物園へお越しください。
〔多摩動物公園南園飼育展示第1係 星澤〕
(2025年01月10日)
(2025年01月14日:展示中止について追記)
(2025年01月22日:展示再開について追記)