みなさんは、多摩動物公園にある昆虫生態園の「沖縄のいきものエリア」に展示されているサキシマキノボリトカゲを見に来たことがありますか?
このトカゲは、沖縄の宮古諸島と八重山諸島に分布しており、おもに樹上で生活しています。その特性を活かした展示では、基本的に木にくっついている姿を見ることができます。しかし、体色が樹木に似た色をしているため見つけるのが少し難しいかもしれません。
生態園では、オス1匹、メス1匹の計2匹のサキシマキノボリトカゲを観察することができます。その2匹のあいだに卵が生まれ、3匹の幼体が孵化し、現在2匹が非公開エリアで無事に成長しています。サキシマキノボリトカゲの卵を孵化させ、幼体を飼育するのは私にとって初めての経験だったため不安はありましたが、特別な体験となりました。

サキシマキノボリトカゲ(成体)
初めての幼体飼育ということもあり、日々の管理には細心の注意を払いました。とくに、幼体が病気にならないよう、4日に1回は飼育ケースを交換し、さらに、毎日2回の霧吹きも忘れずにおこない、湿度を適切に保ちました。サキシマキノボリトカゲは高湿度の環境を好むため、幼体においてはより気をつかい、できるだけ清潔で健康な状態を保つように努めました。
また、えさはフタホシコオロギを毎日10匹ほど与え、いつでも食べられるようにしました。幼体の時期は大きなコオロギは食べられないため、いつもその日に孵化したばかりの幼虫を与えるようにしていました。

孵化したてのフタホシコオロギ
生まれてから3か月ほど経ったあたりで3匹のうちの1匹が体調を崩してしまい、回復することを祈っていましたが、残念ながら亡くなってしまいました。爬虫類は一度体調を崩してしまうとそこから回復するのは困難という話を聞いてはいましたが、実際に体験するとその難しさを痛感しました。
残った2匹が体調を崩さないよう毎日のえさの残量や日々の動きに異常がないかなどを確認し、より慎重に管理をおこなっていきました。そのおかげもあり、2匹の幼体たちは元気よく大きく成長しています。
2〜3年後、2匹が成体になり、展示ケースに登場するとサキシマキノボリトカゲの自然な行動などが見られます。ご期待ください。

現在のサキシマキノボリトカゲ(幼体)
〔多摩動物公園昆虫園飼育展示係 関本〕
◎関連記事
・
昆虫園の裏側! えさ用フタホシコオロギ(2021年02月26日)
(2024年11月08日)