先日、
ズーネットでお知らせしましたが、多摩動物公園で生まれたキリンのメス2頭「ユウノ」(1歳、
2023年7月3日生まれ)と「アキ」(0歳10か月、
2023年12月20日生まれ)をインドネシア共和国の
Batu Secret Zooへ輸出することになりました。

今回搬出するユウノ(左)とアキ(右)
インドネシアから2021年7月に連絡を受け、それを発端に交渉が始まりました。当初は2023年の1月か2月ごろの輸出を予定しており、輸出予定の個体も違いました。しかし、当時はコロナ禍であり、インドネシア国内での新型コロナウイルス感染症拡大による影響や貨物航空便の減少により輸送手段の確保が難航しました。そして当園での高病原性鳥インフルエンザ発生への対応など多くのことが重なった結果、2年近くも予定が延びてしまいました。そのため、輸出予定の個体は2度も変更せざるを得ませんでした。
多摩動物公園では現在キリンの繁殖制限を実施しているため、今回輸出できなかった場合、もう輸出できる個体はいません。空輸の場合、飛行機の中に入る箱のサイズに制限があるため、体の大きさを考慮すると1歳前後のキリンしか対象にならないのです。
輸出する際には事前に出国検疫をおこなわなければなりません。衛生条件に係る処置としてワクチン接種(2回)やダニ駆除(2回)、内部寄生虫駆除(1回)などをおこないます。輸出30日前にあたる2024年10月2日のワクチン接種から始まり、群れから隔離したあとも2日前までに上記の処置をおこなう予定です。特にワクチン接種は2頭のキリンが群れの中にいる状況で獣医師が吹き矢にて注射するという難しい作業でしたが無事成功したので少しほっとしています。
10月8日に群れから隔離し、10月23日に輸送箱を設置する流れになっていますが、この記事が出るころには2頭のキリンを見ることはもうできないかもしれません。
多摩動物公園ではこれまでに17頭のキリンを海外搬出した経験があります。台湾1頭、韓国3頭、中国13頭でしたが、すべて船での輸送でした。船の場合、時間はかかりますが、高さに余裕があるので輸送箱の屋根を上げたり、屋根自体をなくすことができるため2歳以上の個体も輸出したようです。
しかし、最後に海外搬出したのは1993年ですから当時を知る人はほとんどいません。そのうえ、飛行機での輸送や同じ箱に2頭入れることなどは当園にとって初めての経験です(ちなみに、欧米ではひとつの箱に2頭入れて輸送するのが主流で、その方がキリンは安心するそうです)。
過去の経験を生かし、しっかり準備をして無事に送り届けることができるよう職員一同努めていきます。また、インドネシアはキリンにとってすごしやすい気候なので、ユウノとアキが健やかにくらしていけることを願っています。

左:ユウノ、右:アキ
〔多摩動物公園北園飼育展示係 清水〕
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