この暑い夏をみなさまいかがおすごしでしょうか。私が担当するアカカンガルーへの暑さ対策として、運動場への散水や、寝室内でエアコンを稼働させ、屋内外の行き来を自由にするなどおこなっていますが、動物もそれぞれ自身での暑さ対策があります。
衣替え
カンガルー舎を掃除していると、よく毛玉が落ちているのを見かけます。これは「換毛」と呼ばれる毛の生え変わりによるもので、アカカンガルーは夏と冬で毛が生え変わります。毛は自然に抜けるものや、体を掻くことで抜けるものもあります。
毛づくろい
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夏のすがた | 冬のすがた |
写真は同じ個体の夏と冬のすがたです。よく見比べていただくと、夏は毛が短く、赤茶色です。冬は毛が長く灰色です。冬のすがたを見ると、毛が長いためモコモコしているように見えませんか? 個体によって換毛のタイミングやスピードに差があるため、観察してみると夏毛と冬毛の個体が混ざっていることがあります。
気化熱
暑い日にはアカカンガルーの腕や脚がビショビショになっているすがたを見かけます。

濡れた前肢
アカカンガルーはあまり汗腺が発達しておらず、ヒトのように汗をかくことができません。汗の代わりに、太い血管が通っている前肢や後肢を舐めることで、体表を濡らしています。これはヒトの汗と同じで、水分が蒸発するときに周囲の熱を奪う「気化熱」という現象を利用し、体温を下げています。
じつはヒトの腕にも太い血管が通っています。みなさまも暑い日にはカンガルーにならい腕を水で濡らしてみてはいかがでしょうか。
さまざまな暑さ対策をしているとはいえ、日中はなかなか日陰から出てこないため観察しづらいかもしれません。まだまだ暑い日が続きますがカンガルーといっしょにこの暑い夏を乗り切りましょう。

前肢が濡れたアカカンガルー
〔多摩動物公園南園飼育展示第2係 白尾〕
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