多摩動物公園のウォークインバードケージでは、今年も3月の終わりごろから4月にかけてクロツラヘラサギの巣作りが始まりました。バードケージ内に設置した大きめの巣台2つがおもな巣作りの場所になっていて、それぞれの巣台に複数のペアが巣作りをします。この巣台は1.5m四方の木製の枠に樹脂製のネットを張ったもので高さは1.25mです。
一昨年まではそのままの状態で巣作りをさせていました。しかし、1.5m四方の広さだと巣台として張ったネットが中央でたわみ、作られた巣は気がつくと真ん中に寄ってしまい、2つの巣が1つになっていたり、卵が巣の外に落ちていたりしていました。
これを解決するために昨年は、巣台に角材で仕切りを入れてみました。1つの巣台を3つの区画に仕切ってみましたが、やはりそれぞれの巣の境界がわからなくなってしまい、きれいに整えるようすは見られませんでした。今年は仕切りを増やして4つの区画にしてみたところ、区画の大きさはほとんど変わらないのですが、それぞれの巣がしっかりと作られるようになりました。

巣台の上にできた巣のようす
クロツラヘラサギは巣を作る場所をペアのオスが決めます。仕切られた区画の中でオスが気に入った場所を取っていきます。今年は園路から離れた奥の場所から巣作りが始まりました。よく見ると、それぞれの巣は区画のかどをうまく利用して作られていきました。2つの巣台で合計13個の巣が作られたところで落ち着きました。過去2年の巣づくりとは違い、大まかに巣ができてからも盛んに巣材が運ばれて巣が整えられていきます。
巣材として、ケージ内の樹木を剪定してその枝をいれることもありますが、多くはクロツラヘラサギ自身が、植えられている樹木の枝を折って持ってきています。へらのようなくちばしは、なんとも効率が悪い形に見えますが、彼らは器用に枝をくちばしで挟んで折っていました。ときには、隣の巣から横取りしていることもありました。巣材が多く運ばれ、巣の高さがだんだん高くなっていく巣が出てきました。ペアの力関係が表れているのかもしれません。
巣台のほかに、今年は地面に巣を作り始めたペアがいました。それぞれ事情があり、飛ぶことができないオスとメスがペアになったのです。飛べないため、巣台に上がって巣をつくることができません。気がつくと地面の上に巣材が集められています。
ただ、巣を作り始めた場所は、金網越しとはいえ、背側が園路のそばでした。そこでほんの少しだけ園路から離れた場所に集められていた巣材を移して営巣場所の移動を試みたのですが、そのペアのオスは最初に集めた場所に巣材を戻してしまいました。彼は最初の場所がよかったようです。地面の上のままでは雨などで浸水してしまうことが考えられたため、飼育係が大きめの石で土台を作り、集められた巣材をのせておくと、その上に立派な巣を作りました。
このペアが巣作りを始めたころは、バードケージは高病原性鳥インフルエンザ対策のため閉鎖中で園路を来園者が歩くことはありませんでした。しかし、鳥インフルエンザの国内流行が終息してウォークインバードケージの観覧が再開すれば来園者が巣の近くを歩くことになり、営巣をやめてしまうことが考えられました。そこで、園路側の金網に板を貼り目隠しとしました。この目隠しがよかったのか、展示が再開してからも営巣は続きました。

地面に作った巣のようす。背面には目隠しの板を貼っている
その後、巣台で巣を作ってはいたけど、うまくいかなかったペアがこの地面の巣の横に巣作りを始めました。石で土台を作ってみたところ、地面に2つの巣ができました。
〔多摩動物公園南園飼育展示第1係 土屋〕
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