多摩動物公園の昆虫園では、2016年3月5日(土)と6日(日)、「啓蟄」にちなんだイベントを開催しました。啓蟄は1年を24の季節に分けた「二十四節気」のうちのひとつで、冬ごもりしていた虫が目を覚まして地上に出てくる季節とされています。
季節といえば「春夏秋冬」の4つを思い浮かべる方がほとんどではないでしょうか。二十四節気を見ると、昔の人々がいかに季節の移り変わりを楽しんでいたかということがうかがえます。
私たちが啓蟄イベントをおこなったころは春本番からはまだ遠く、やっと2日前にクロオオアリが地上に出てきた頃でした。三寒四温とはよく言ったもので、啓蟄の後も温かい日と肌寒い日を繰り返し、せっかく出てきたクロオオアリも終日休業の日が多くありました。今では桜が咲き、やっと春らしくなったことは、みなさんも感じているだろうと思います。

休息中のテングチョウ
そうして多摩動物公園の園内ではさまざまな虫が姿を現すようになりました。みなさんが比較的発見しやすいのは、チョウのなかまではないでしょうか。園内では3月に入るとルリタテハやキタテハ、テングチョウに始まり、多くのチョウが見られるようになりました。
チョウの中でも、卵で冬を越すものや蛹で冬を越すものなど、冬越しの方法が種によって異なります。春一番で姿を見せるルリタテハなどのチョウは、成虫で越冬するタイプのチョウです。それぞれがそれぞれの方法で厳しい冬を越しているのですが、身ひとつで冬を乗り越えた成虫越冬のチョウを見ると、春を感じる思いもひとしおです。

活動を始めたナナホシテントウ
また、花にはハチやアブのなかまが頻繁に訪れ、陽だまりでじっとしているナミテントウなども見られました。腐葉土の中や朽ち木の中など目につかないところでも活動を始めている虫たちがたくさんいます。

朽ち木の樹皮下で羽化したばかりのアカハネムシ
みなさんもぜひ、動物園で動物をみる合間に、または近所の公園で、こうした生きものたちを探してみてはいかがでしょうか? 小さな春を見つけると、自然と心がほころびます。春の散歩に出かけましょう!
〔多摩動物公園昆虫園飼育展示係 古川紗織〕
(2016年04月01日)