多摩動物公園の昆虫園本館では2015年9月10日から9月29日まで「秋の鳴く虫展」を開催しています。「鳴く虫」といえば、セミなども含め、さまざまな昆虫が知られていますが、多摩の鳴く虫展では十数種類のコオロギ類やキリギリス類を展示しますが、一部は野外で採集しました。今回ご紹介するクツワムシもその一つです。

クツワムシが生息する草地
クツワムシは日本に生息するキリギリスのなかまでは最大の種で、丈の高い草地などに生息しています。大きな声で「ガチャガチャガチャ」と鳴き、この音が馬の口にはめる馬具「くつわ」が擦れる音に似ていることからこの名前がつきました。
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緑色のクツワムシ | | 茶色のクツワムシ |
キリギリスのなかまは肉食傾向の強い種類が多いのですが、クツワムシはクズの葉などを好む草食傾向の昆虫です。また、茶色の個体と緑色の個体が見られますが、同じ種でなぜこのような体色の変異があるのか、その理由はよくわかっていません。
オスは夜になると大きな声で鳴くので、捕まえるときには鳴き声のするあたりをライトで照らし、見つけたらカップや素手で捕まえます。鳴く虫は一般に人の気配がすると鳴きやみ、逃げてしまうことが多いのですが、不思議なことにクツワムシはあまり逃げません。そのおかげで、比較的簡単に捕まえることができました。
採集はスムーズに終えることができたのですが、その後が大変でした。自宅に持ち帰ったクツワムシたちが深夜に大合唱を始めたのです。野外では気づきませんでしたが、室内で聞くクツワムシの鳴き声はかなりの音量です。おかげですっかり寝不足になりましたが、昆虫の鳴き声の凄さを体験するよい機会になりました。
クツワムシは夜に鳴くので展示場で鳴き声をお聞かせすることはむずかしいのですが、実際の姿を見る機会はあまりないと思います。ぜひ、多摩動物公園に足をお運びいただき、「秋の鳴く虫展」でクツワムシの姿をご覧ください。
〔多摩動物公園昆虫園飼育展示係 古橋保志〕
(2015年09月11日)