2014年12月6日、多摩動物公園にハキリアリの新しい群れが到着しました。アリは女王を中心に群れを形成しますが、到着したのは2群です。現在、以前から飼育していた群れとともに昆虫園本館2階で展示中です。来園から約1か月がたち、群れも落ち着いてきました。
ペルーからはるばるやってきた新しい群れは、プラスチックの容器に1群ずつ入っていました(写真1)。確認したところ、どちらの群れにも女王が生存していました。
ハキリアリは葉をかじり取って巣に運び、菌を育ててえさにします。菌を育てる“畑”を「菌園」と呼びますが、容器の中の菌園もまずまずの状態でした。ただし、今まで展示していた菌園はスポンジ状だったのですが、到着した群れの菌園はそぼろ状をしていました。少し心配ながら、ふたのない容器に移してようすを見ることにしました。
写真1:プラスチック容器に1群ずつ入った状態で到着 写真2:菌園が育ってきたので展示ケースに移した
3日ほどたつと、アリは葉をきちんと切って運び、菌園も少し増えてきたので、思い切って展示ケースに移すことにしました(写真2)。といっても、大きなケースだと菌園が乾燥してしまうので、まずは小さなケースを使います。ふたの上には水分を含ませたスポンジを置いて湿度を保つようにしました。
新しい群れを展示ケースに入れて6日目の12月16日、展示室1の群れの個体が日中に葉を運んでいました(写真3)。以前のように「働きアリが列をなして葉を運んでいく姿」が見られるのはまだ先になると思われますが、まずはハキリアリらしい姿を見ていただけるようになり、一安心しました。
写真3:2014年12月16日、葉を運ぶ姿を確認
最近は、最初の菌園がほとんど見えなくなり、新しい菌園が増えています(写真4)。観覧通路からは見えないのですが、卵や幼虫も順調に増えています(写真5)。
写真4:展示室1。新しい菌園が増えてきた 写真5:卵や幼虫も順調に育っている
なお、展示室2の群れは増え方が緩やかで、切って運ぶ葉の量も少なめですが、こちらも着実に成長しています。
担当者も毎日緊張しながら葉や煮芋を与え、温度や湿度の管理に気を配っています。この小さな群れが成長し、ケースを4つも5つも繋げた大きな菌園をはぐくんでくれるよう、ていねいに管理をしています。
11時半のえさの時間の再開時期は未定ですが、菌園そして新しい群れの成長を見守ってください。
〔多摩動物公園昆虫園飼育展示係 片田菜美〕
(2015年01月17日)